『文章をしっかり読み取る ~助詞を意識する~』
2022.10.14
小学3年生の国語カリキュラムでは、夏期講習会で「主語・述語」の学習を行いました。小学4年生では、一学期にも扱いましたが、二学期にも「文節」とからめて学習をしています(予習シリーズ下巻第6回)。 主語と述語を見分ける基本的な考え方は、「まず述語を見つけて、それに合う主語を見つける」という手法です。標準的な文(倒置文や省略文以外)では、主語の方が前にありますので、主語から探そうとする生徒もいるのですが、「まずは述語から考えよう」という指導をしています。さらに、どのような助詞がついているのかをチェックさせるようにしています。主語につく助詞といえば、「は」「が」はすぐに思いつくのですが、「も」「こそ」「さえ」「だけ」などの語もつくことがあります。
日本語が「難しい言語」と言われる要素の一つとして、「助詞・助動詞」という付属語の存在があります。英語と比較してお考えいただくとわかるのではないでしょうか。よく「『てにをは』を大事にしましょう」ということが言われますが、この「てにをは」は、狭い意味で「助詞」を、広い意味では「言葉遣い」や「文のつくり方」を意味する単語となっているようです。
国語力が高い生徒は、助詞に対する意識が高いと、私は思っています。小3・小4時点であれば音読をさせてみるとわかるのですが、助詞の読み間違いや「飛ばし」が目立つ生徒がいます。そのような生徒は大抵、国語を苦手としていることが多いのです。日本語の場合、助詞を一文字間違えるだけで文意は大きく変わってしまいます。そういったところに、(自然と)意識が向いているかどうかで、読解力そのものにも差が出てくるのでしょう。
また、記述問題の解答をきちんと「まとめる」ためにも、助詞をしっかりと使いこなすことが大切になってきます。小4までの記述解答の場合、解答に必要な「要素」が入っていれば、マルをつけることの方が私は多いのですが、小5以上になってくれば「要素」だけではなく、「文としてきちんとまとまっているか」という点も心がける必要があります。そのためには、適切な助詞をきちんと使うことが必要です。
助詞はその「使い方」だけではなく、文脈からきちんと意味を理解することも必要になってきます。たとえば「の」という助詞については、非常に便利で使いやすいものなのですが、その反面意味をしっかりと考えなければなりません。「先生の絵」という表現で考えてみてください。その意味するところは、大きく3つ考えることができるはずです。「先生が描かれている絵」「先生が所有している絵」「先生が描いた絵」という3つです。この点に関しては、文章を読解するときはそれほど意識する必要はありません。意味が曖昧にならないように、書かれていることがほとんどですから、意識して考えなくても自然と理解ができるはずです。一方で、解答をつくるときには、曖昧な記述にならないように注意をすることが必要になります。
また、「へ」という助詞についても考えてみましょう。「成績への悩み」という表現を聞いたことがあります。「成績に関する悩み」という意味だと推測されるのですが、「へ」という助詞が入っていると「悩み」そのものが「『成績』に向けられた」もののように表現されてしまうわけです。「へ」をとって「成績の悩み」とすれば問題はないのですが……。「先生への相談」「母への手紙」という表現と比較していただくと、わかりやすいかもしれません。「相談」「手紙」が向けられた対象が、それぞれ「先生」「母」となるので、これらの表現に違和感はありません。しかし「成績への悩み」という表現の場合、「悩み」が向けられる対象が「成績」ではないので、少し違和感を持つわけです。 助詞ではありませんが、似たような表現に「○○に対する」と「○○に関する」という言い方があります。よく同じような意味で使われているのですが、厳密にいえば、やはり使い方は違うものです。「対する」は助詞でいえば「への」に近く、「関する」は「の」に近くなるでしょうか。
少し細かい話になってしまいましたが、国語力・読解力・作文力を伸ばしていくことを考えたときに、(小学生にとって)難しい語彙を多く身に付けることはそれほど大切なことではありません。それよりも、助詞をはじめとした「表現」を正しく理解し、さらには使いこなせるようにすることが効果的だと考えています。
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