『「ごめんなさい」の背景を考える』
2023.06.21
全国統一小学生テスト、各学年の「公開組分けテスト」が終わりました。成績が気になるところですが、この時期はそれ以上にお子様のモチベーションにご注意ください。2月から塾では新学年になり、4月には学校でも新しい学年に切り替わりました。この時期、お子様方は比較的「新鮮な」気持ちでやる気も高かったのではないでしょうか。そこからゴールデンウィークを経て、5月末から6月に関してはだんだんと「学習に対するやる気」が下がってきてくるのが例年の全体的な状況です。ご家庭での学習状況をご覧になっていても、「集中しきれていない」「机に向かっていても鉛筆が動いていない」というお子様の姿が気になっている方もいらっしゃるでしょう。「全国統一小学生テスト」や「組分けテスト」の成績についても、本来の学力ではなく、意識や気持ちの面での影響が大きかったお子様も多かったのではないかと思っています。今年は新型コロナウイルス感染症による行動制限が大きく緩和されていることで、各小学校でも学校行事が盛んに行われているようです。校舎にくる生徒の中からも「運動会」や「移動教室」といった話題が聞こえてきています。「勉強・学習」よりも、そちらに気持ちがいってしまっているお子様もいらっしゃることでしょう。しかしここからは、一年間で一番「伸びる」夏休みに向けて、ご家庭でも学習に対して意識を高めていっていただければと思います。
今回は、ご家庭におけるお子様への接し方について書かせていただきます。お子様が何か失敗してしまったとき、当たり前ですが「ごめんなさい」という言葉を口にすると思います。その「ごめんなさい」の背景にある意識について考えてまいります。
叱られているときに口にする「ごめんなさい」ですが、そこには二通りの「ごめんなさい」が存在していると考えています。自分の行動について反省して、なにが悪かったのかを理解した上で発する「ごめんなさい」と、相手が怒っているので、その怒りを鎮めるために発する「ごめんなさい」の二つです。
宿題をきちんとやっていなかったことが見つかり、お母様に叱られているときの「ごめんなさい」を想像してみてください。やらなければならないことをやっておらず、さらに「ちゃんとやっている」とごまかしていたとしましょう。なぜ宿題をやらなければならないのか、きちんとやらなかったのはなぜなのか、ごまかすことがどうしていけないのか……そういった理解ができて、「自分の行動」を反省しての「ごめんなさい」であれば、次に同じことをする可能性は下がります。
しかし、相手の怒りを鎮めるためだけの「ごめんなさい」は、自分の行動に対する反省が含まれていないので、結果として同じことを繰り返す可能性が多いはずです。「のど元過ぎれば……」という感じでしょうか。 「ごめんなさい」に対して、「なにがごめんなさいなの?」という質問をされる方もいらっしゃるでしょう。「宿題をきちんとやらなくて、ごめんなさい」「ごまかして、ごめんなさい」というように、自身の行為に対しての「ごめんなさい」であることがはっきりと出てくれば、それは前者(反省と自分のよくない行為に対する認識がある状態)と考えることができます。
一方で後者の場合は、「怒らせて、ごめんなさい」といった、相手の行為や感情に対する「ごめんなさい」が出てくることがあります。また「ボクが悪いんです」といった曖昧な表現になってしまうこともあります。また、何かをまだ隠したい場合やごまかしたいものがある場合などは、曖昧な「ごめんなさい」になってしまうこともあるようです。いずれにしても、自身のどの行動が悪いことであったのかを、きちんと認識させることが必要ですし、それができているかを確認することも大切だと考えています。
「ありがとう」の場合は、その逆です。 「ごめんなさい」は自分の行動に対して発することが必要な言葉ですが、「ありがとう」は他者の行動について想いを馳せて発する言葉になります。
机の上の飲み物を不注意でこぼしてしまったとき、「ごめんなさい」という言葉を口にしないお子様は少ないでしょう。もちろんこの段階で「こぼした」という事実だけではなく、そこに至る自身の行動(事実の要因)まで考えていての「ごめんなさい」であれば、よりよいのですが、そこまでは求める必要はないと思います。「よそ見をしていてごめんなさい」「ふざけてしまってごめんなさい」というような要因に対する「ごめんなさい」ですが、それはここではおいておきましょう。
当然、そのあとにこぼした飲み物を片付けることになります。割れたコップの処理も必要かもしれません。それを親がやってくれたとしたら、そこで「ありがとう」という気持ちが芽生えてほしいと思うのです。自分の失敗を許してくれて、カヴァーしてくれたことに対する感謝、そんな思いが持てるようになれば、精神的な成長だとお考えいただいてもよいでしょう。
「協働性・協働力」という言葉が、現在の教育におけるキーワードの一つとなっています。小学生時点では「協力して働く力を育む」というよりも、その土台となる「他者理解の力を身に付けさせる」という点から始めるべきだと考えています。他者の考えや感情を理解しているかどうかが、「ありがとう」という言葉につながってくるようにも思うのです。できれば、「ごめんなさい」よりも「ありがとう」をたくさん口にできる子どもになってほしいと思っています。
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