『中学受験へ向けた学習の先にあるもの……』
2023.10.04
最近は、ほとんどの中学校の入試科目は「算数・国語・理科・社会」の4科目となっていますが、以前は「算数・国語」の2科目受験を行っていた学校も多くありました。また、現在でも俗にいう「傾斜配点」として「算数・国語」の方が「理科・社会」よりも高い配点となっている中学校も多くあります。「算数・国語」が重視されているというわけですが、それはなぜなのでしょうか。
将来的に「算数・国語」を専門的に学んだり、それらを専門として社会で活躍したりというケースは少ないはずです。大学においては、自然科学系では物理・化学・生物(医学生理学を含む)といった学部・学科に進む生徒が多いでしょう。また、社会科学系では法学部・経済学部・社会学部などといった学部が一般的です。小学校や中学校で「理科・社会」と呼ばれている分野を専門に学ぶ生徒の方が圧倒的に多いわけです。しかし、中学入試では「算数・国語」、高校入試でも「数学・国語・英語」が重視されているのです。
結論から申し上げてしまえば、算数と国語はこれからの将来、さらなる高いレベルで「学ぶための土台」であり、「学ぶためのツール」なのです。小学生の「理科・社会」は暗記的な要素も大きい科目です。最近の中学入試では「理科的思考・社会的思考」を試す問題が出題される割合も多くなってきています。過去の入試問題として「世界環境危機時計が2017年から2018年で14分も進んだ政治的理由を問う(渋谷教育学園渋谷・社会)」「自然の物質の流れを考えて、未来のトイレを考える(成蹊・理科)」といった単なる「知識・暗記」では対応できない問題も出題されました。ただ、やはり全般的には、知識をしっかりと身に付けているかどうかで、「理科・社会」の得点は決まってきます。
算数も国語もある程度の「知識」は必要です。しかし、それ以上に大切なのは「思考する力」であることに議論の余地はないでしょう。算数でいえば設問で与えられた条件を整理し、どういう切り口で考えれば解答までの道筋を進むことができるかを判断してから、実際に「解く」という作業が始まるわけです。
「国語」という科目が「日本語の学習」ではないということはご理解いただけると思います。もちろん、幼稚園から小学校低学年までは「ひらがな・カタカナの書き方」などの語学的な要素も多くありますし、中学受験でも「語句知識(漢字を含む)」「文法」といった内容もある程は出題されます。しかし、「国語」という科目のメインとなっている「読解問題」は日本語の力を試すものではありません。
説明文や論説文の読解問題で学習するのは、日本語で書かれた文章に対する「論理的思考力」であり、物語文や小説で学習するのは、「他者を理解する力」や「言葉では書かれていないことを類推する力」といった内容です。一言でいってしまえば「読解力」ということができる力ですが、この「読解力」は日本語で書かれた文章にしか通用しない力ではありません。お子様方が将来外国語を学び使いこなせるようになれば、その言語で書かれた文章に対しても活用できる力になることは間違いありません。
さらに国語の学習で重要になるのは「表現力」です。文章を簡潔にまとめる(要約する)力、自分の考えていることを伝える力などは、さらなる高いレベルでのさまざまな科目学習においても必要になる力のはずです。
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