『学力を伸ばす』
2023.12.15
先日、新年度に向けた「入塾説明会」が早稲田アカデミー各校舎で実施されました。その中で、進学塾としての早稲田アカデミーの位置づけについて、次のような話をさせていただきました。
「首都圏にはたくさんの『塾』があります。『塾』全般の本来の役割は、「学力向上」であり、保護者の皆様はそれを期待して、お子様を塾に通わせていらっしゃるのだと思います。早稲田アカデミーはそのなかでも「進学塾」として、単に「学力を伸ばす」だけではなく、「学力を大きく伸ばして、志望校合格に導く」という役割を持っています。その点において、早稲田アカデミーは徹底的にこだわり、お子様と保護者の皆様のご期待、ご信頼にお応えしてまいります」
そこから「学力」についてのお話もさせていただいたのですが、今回はその内容をまとめてご紹介いたします。「学力」という言葉から保護者の皆様はどのようなことをイメージされるでしょうか。得点や偏差値などの数字が頭に浮かぶ方もいらっしゃると思います。一方で「学力」とは「学ぶための力」であると聞いたことがあります。その言葉に、私は非常に共感を持ちました。中学入試・高校入試・大学入試の「入試」はいわば「学力試験」であり、「学力」を試されるというのは、すなわちその学校でこれから「学ぶための力」を持っているかどうかを試されているのだと考えることもできます。そう考えると、何のために学習をしていくのかもはっきりとします。ときどき教室の中で生徒たちにも「いま勉強しているのは、中学校でさらに学んでいく力をつけるためで、中学校で勉強するのは、その先の高校・大学で学んでいく力を身に付けるためなんだ」という話をすることがあります。単に中学入試に合格するだけの勉強ではなく、その先につながる力を身に付ける勉強であれば、そこへ向けた気持ちも変わってくると思います。
「学力」がその先のステージで「学ぶための力」と考えると、そこで学ぶことを理解していなければ、伸ばしていく学力の方向性もずれてしまうことになります。狭い視野で考えれば、それぞれの中学校の指導方針を理解していなければその中学校で学ぶための力を身に付けられないということです。各中学校では指導方針や教育理念に合わせた入試問題を出題しています。
もう少し広い視野で考えると、小学校・中学校・高校で身に付ける「学力」は、その先のステージである大学で「学ぶための力」ということになります。とするならば、いま大学で学ぶためには、どのような力が必要とされているのか、という点から考えることも重要でしょう。
「学ぶ」というと、最終的な教育を受けるのは大学ということになりますが、実際には大学で終わるわけではなく、社会に出てからも(もしくはそれからの方が)学ぶ機会は多くあると私は考えています。そして、小学校から始まり大学までの一連の「学習」は、社会に出てからさらに学ぶための力につながるのだと考えています。ただ、社会に出てから「学ぶ」ということになると、話を広げすぎてしまうことになりますので、今回は大学で学ぶために求められる力について考えてみたいと思います。
20年前、30年前と比較をすると大学で学ぶことそのものが大きく変化してきているとよく言われます。時代や社会情勢の変化・進化にともない大学で学ぶことが多様化し、より専門性が高くなってきています。範囲が広くなってきていると言い換えてもよいかもしれません。しかもその範囲は、『浅く広く』ではなく、『深く広く』なっているので、求められる「学ぶ力」のレベルもより高いものになってくるわけです。過去の教育においては、身に付けている「知識の量」が「学力」と呼ばれていた時代もありました。しかし、今の大学で求められる知識の量は20年前と比較にならないそうです。ある大学の先生にうかがった言葉があります。
「昔は知識を身に付けていればそれでよかった。知らないことが少ない方が評価されていた。現代ではすべての知識を身に付けることなどは不可能だ。だから、知らないことがたくさんあってもいい。知らないことをどうやって調べるかがわかっていることの方が大切な社会になっている。そして何よりも重要なのは、調べた知識をどのように自分にとって必要な情報として組み合わせ、次につなげていくかである」
非常に共感させていただきました。知識を身に付けてもそこまでで終わってしまえば、そこから先の発展はありません。その知識をどのように活用していくか、そこが一番大切なことなのだと思います。いまの大学で求められる力の一つは、単なる知識の積み重ねではなく、その知識や情報をいかにして手に入れるか、そして手に入れた知識や情報を活用する、そんな方向になるのではないでしょうか。
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