『早稲アカの椅子がほしい』
2023.12.08
以前、担当していた小6受験生のお母様からご相談をいただいたことがあります。「早稲田アカデミーの椅子はどこで買えますか?」という内容でした。詳しくうかがったところ、お子様から「お誕生日のプレゼントに早稲アカの机と椅子がほしい。あの椅子に座っていると勉強がはかどるから」というリクエストがあったというお話でした。
小学3年生から早稲田アカデミーに通塾してくれているお子様で、自分でも「いよいよ入試に向けて本格的に取り組まなければならない」と考えた結果のリクエストだったようです。椅子は既製品なのですが、机は早稲田アカデミーの教室のサイズと生徒の学習効果を考慮してつくられている特注品なので、個人では購入できないことをお伝えしたところ、お子様が「じゃあ、自習室で勉強するからいいや」となって、ほぼ毎日自習室に来ていたのを覚えています。
よくいただくご相談で「家庭学習の時間はちゃんと取っていて、勉強もやっているようなのだけれど、それが結果につながらない」というものがあります。詳しくうかがってみると多くの場合、「かけている時間と比較をして、内容が薄い学習」になってしまっているというケースがほとんどです。一方で、親は「時間をとって机の前に座っている」ので、その瞬間は「勉強している」と思って安心しているということもあるようです。 特に小学生の場合は、「ダラダラとした長時間の学習」よりも、「短時間で集中して学習」する方が高い学習効果を得られると、私は考えています。集中して学習することで、学習内容の定着度が高まると言い切ってもよいかもしれません。「のんびり」という言葉でもよいですが、「ダラダラ」というイメージの学習では、「頭脳の回転スピード」は決して速くはないでしょう。一方で「短時間で集中する」学習における「回転スピード」はかなり速いはずです。私のここまでの経験では、後者のスタイルで学習した方が定着度合も高くなっています。
漢字テストが苦手で、なかなか満点がとれない生徒がいました。家庭学習では漢字の練習にかなりの時間を使って、「漢字練習帳」に何回も書いて練習するという学習方法をとっていたのですが、個別面談でそれを変えることを提案させていただきました。「毎日5分間だけじっと見る」「書いて練習するのは国語の授業前日の夜の1回だけ」という方法に切り替えてもらったのです。初めのうちはなかなか慣れなくて戸惑うこともあったようですが、それまで毎日20~30分やっていた漢字練習が5分だけになったことで、逆に「集中して取り組む」ようになり、慣れてくると満点がとれるようなっていました。そのスタイルを他の科目(特に理科社会)にも応用して、暗記学習などには効果が出るようになり、半年後には全科目の成績が上がっていました。
初めにご紹介した「椅子」の話になるのですが、家庭学習において集中できる環境を整えることは、成績を上げるためにはとても大切なことだと思っています。私は学習効果を高めるための家庭学習の仕方について、「決まった時間に、決まった場所で、決まった内容を」というキーワードをお伝えすることがあります。個別面談などで、一週間の学習スケジュールを確認させていただき「学習時間」と「学習内容」については一緒に考えさせていただくのですが、「学習場所」についてはなかなか踏み込むことはできません。各ご家庭の住居環境もありますので、一概には言えないところもありますから。ただ、小学生の場合には「リビング学習」をおすすめすることが多くあります。高学年になって、ある程度一人でも集中できるようになってきて、さらに「自制心」がついてくれば、「自室学習」でもよいのですが、低学年から中学年の間は「誰かの気配」が感じられるところの方が、安心して学習に集中できるというお子様が多いようです。
中学受験に合格されたご家庭にお話をうかがっても、入試に向かう最後まで「リビング学習」を継続されたという方も多くいらっしゃいました。ただ、私は「学習場所は(できれば)学習するためだけの場所」であることが望ましい、とお話しさせていただいています。
自室に自分専用の学習机があるというお子様もいらっしゃるでしょう。「そこでは勉強しかしない」と決めていれば、学習に対して集中できる場所になるはずです。しかし、そこで読書もしたり、ゲームもしたり、ということになってしまうと、結果として「学習に集中できる」場所ということにはならないものです。「ここに座ったら勉強をするんだ」という気持ちになるためにも、「学習しかしない場所」という環境をお考えいただければと思います。
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