四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『スペシャリストになる ~塾講師の専門性①~』

2024.05.08

ゴールデンウィークが終わりました。皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか。事前に、私が担当しているクラスの生徒に聞いてみたところ、いろいろな「お出かけ」を答えてくれました。テレビでもやっていましたが、やはり「コロナ明け」というところなのでしょうか。アクティブに過ごされた方も多かったことと思います。私は例年のことなのですが、家の掃除と衣替えをしました。5月から早稲田アカデミーでは「クールビズ」となりますので、ネクタイをしまったり、厚手のスーツをクリーニング屋さんにもっていったり、という連休でした。


もう一つ、毎年この連休に行っているのが、「入試問題研究」です。例年ですと、さまざまな学校のその年の入試問題を解いているのですが、今年は趣向を変えて、ある学校の算数の問題を30年分ほど解いてみました。平成元年の問題から手に入ったので、古い方から順番に解き進めてみたのですが、さまざまな発見がありました。やはり30年前の問題は、いまの入試問題とは大きく違っていました。一言でいえば「考える問題というよりも、知っていれば解ける問題」という印象です。最難関中なのですが、30年前の問題はいまでは小学5年生のテキストレベルと言ってよいものも出題されていました。さらに年ごとに見ていくと、大きく「出題傾向」や「解くための思考過程」が変わる年があって、「この年から作問者が変わったのかな」などという見方ができるのも面白く感じていました。


進学塾の講師ですから、入試の専門家(スペシャリスト)でなければならないのは当たり前のことだと思います。その点から「入試問題研究」は必要なことだと思っています。ただ、講師に求められる「専門性」は単なる「入試問題(入試傾向)の知識」だけではないのです。


たとえば、「学校情報」も必要です。基本的なところでは、「所在地」「入試定員」「入試日程」「大学進学実績」などなど。ときには「部活動」や「制服の有無」などを聞かれることもあります。「〇〇中にはクイズ研究会はありますか?」という質問を受けることもあるのですが、そこまでは答えられないですけれど。


そして、もう一つ重要な「専門性」は、「授業」に関する知識と技術です。受験学年の単年度だけではなく、複数年にわたるカリキュラムを理解しておかなければなりません。小学3年生で教えている単元が、小4・小5と上がっていく中で、どのように発展・展開されていくのか、そして最終的に入試ではどのように問われるのか、ということも理解しておく必要があります。さらにその単元を「どのように教えるのか」という授業技術も大切です。目の前の生徒たちにわかりやすく伝えるための知識と技術ということになります。さらに、その前提として「きちんと聞かせる」という手法も必要になってきます。


20年ほど前に、「中学受験を目指す小学生」のスペシャリストになろうと考えました。入試やカリキュラムなどの「教える内容」についての知識が必要なのは当たり前なのですが、一方でその情報を受け取る側、つまり生徒たちに関する「知識」も必要だと思ったのです。もともと「教育心理学」や「児童心理学」を専門的に学んでいたわけではありませんから、イチからいろいろと調べていきました。初めのうちは専門書に書かれている内容が一つひとつ新鮮で説得力があり、「なるほど」とうなずいていたのですが、そのうち「あれ?」と思うことが出てきました。いままでの自身の経験と照らし合わせたときに、納得できることと違和感を覚えることを、それぞれ感じ始めたのです。特に違和感を覚えることが多かったのは、子どもの成長段階・発展段階とそれに合わせた「興味関心の方向性」や「思考の筋道」という点でした。そこで気がついたのですが、やはり進学塾に通っている子どもは、一般的な小学生とは違いがあるのではないかということです。たとえば、幼児期からスイミングクラブに通っている子どもは、単に泳げるようになるだけではなく、体力もついているでしょうし、体幹も鍛えられていることでしょう。当然、水泳以外の運動能力も他の子どもとは違っているはずです。進学塾に通っている生徒の割合を考えてみると、首都圏でも15%から17%くらいですし、首都圏以外の地域ではもっと少ないわけですから、やはり一般的な子どもとは違う部分もあるのだと思います。そこに気がついたときから、専門書の読み方も変わりました。単純にそこに書いてあることを鵜呑みにするだけではなく、考えながら読むようになったのです。


さて、実は進学塾の講師として「スペシャリスト」になるためには、もう一つ大切な要素があります。その点については次回に書かせていただきます。

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