『精神的な成長のために(3) ~精神的成長を促す働きかけ(後編)~』
2012.03.28
前編では精神的な成長を促すために、ご家庭でできる方法として、『お子様自身の意識を高めること』『他人の考え方に触れさせ理解させる』という二つの方法について書かせていただきました。
二つ目でお話した『他人の考え方』に触れるというのは、自分から遠い位置にいる他人が考えていることを想像し、理解しようと努めることです。最近の中学入試における国語出題文のひとつの傾向として、古い時代の物語や海外の翻訳小説が選ばれることがあります。少し前までは、現代における、受験生と同じような世代の登場人物がでてくる物語の出題割合が高かったのですが、それが変わってきています。これは、自分とは異なる生活環境や文化の中にいる登場人物の心情を捉えることができるかどうかを試していると考えることができます。言い換えれば、それだけ高いレベルで精神的に成長している生徒を欲しがっていると言うことができるかもしれません。例えば、平成22年に開成・女子学院の二校で太宰治の作品が取り上げられています。また、開成では今年も下村湖人の『次郎物語』が出題されています。
さて、三つ目は同じ『他者』でも、同年代の『他者』からの刺激です。同じような環境にいる『他者』からの刺激によって、精神的な成長を促す方法です。例えば、個別指導と集団クラス授業で考えてみます。個別指導は、その子ひとりのためにカリキュラムが組まれますから、弱点補強をするためには非常に効果があるスタイルの指導方法です。しかし、個別指導だけで中学受験をするのは難しいと言われます。それには二つの理由があります。一つ目は学習カリキュラムや指導のスタートラインがその生徒の現状からになることが多く、目標から「逆算」したものではないので、結果として志望校が求めるレベルまで届かないことが多い点。二つ目は他の生徒からの刺激による精神的成長が行われない点と言われています。多くの進学塾で「習熟度別クラス」で授業が行われているのは、もちろん指導レベルの照準が合わせやすいこともありますが、同じ目標に向かう同じレベルの他者からの刺激によって、精神的な成長が期待できるからなのです。特に「特別な」環境の中では、その効果は大きく、早稲田アカデミーが毎年実施している『夏期合宿』も、小学校4年生・5年生のカリキュラムは、その意図を持って組まれています。
なぜ、自分と同じような環境にいる他者からの刺激が、精神的な成長につながるのかは考えてみると簡単です。同じような環境なので、自分と同じようなレベルにいると思っていた友達が、気がついてみると自分よりも「できる」部分がある。そう感じたときに「自分もそこまでできるようにならなければ...」という思いが生まれてくるはずです。一種の競争心と言ってもよいでしょう(『競争心』がお子様方の成長に不可欠なものであることはまたの機会にゆずりますが、ご理解いただけることと思います)。その競争心がモチベーションとなって、子どもたちは自らを高めようと努力し、成長していくのです。
早稲田アカデミーでは春期講習会の真っ只中です。私も朝から授業に立っています。春休みは小学校での学年の切り替わりの時期ですから、精神的な成長が促しやすいのは前回の記事にも書かせていただいたとおりです。ぜひ、お子様との会話の時間を増やしてみて下さい。
正解できましたでしょうか?次回のブログで、四つ葉のクイズ其の29を出題する予定です。お楽しみに。
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