四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

「国語の学習に関して③ ~記述力・表現力~」

2017.06.30

「国語学習」についての3回目の記事となります。今回は「記述力・表現力」について。


少し固い話になりますが、学校教育法において「学力の3要素」は以下のように定められています。


①基礎的・基本的な知識・技能

②知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等

③主体的に学習に取り組む態度


現在さまざまなところで報じられている「高大接続システム改革」も、この「学力の3要素」に沿って進められています。センター試験に代わって実施される予定の「大学入学共通テスト(仮称)」においては、②の「思考力・判断力・表現力」を試すために「記述式問題」が導入されることが決まっているようです。

そういった点からも、さらに将来社会で活躍するためにも、「記述力・表現力」をしっかりと身につけておくことが大切です。中学入試においても、記述型の設問が多くなってきています。加えて「自分の考え」を書かせるタイプの問題も増えてきています。公立中高一貫校で出題される「作文問題」は、その典型かもしれません。「本文をまとめて、それに対する意見を書く」「本文の内容と同じような自分の体験を書く」などの問題が毎年出題されています。中には「絵を見て感じたこと、考えたことを書く」というような問題を出題している学校もあります。


さて、「記述力・表現力」を高めていくためには、なにが必要でしょうか。もちろん「書くこと」そのものも必要ではあるのですが、それ以前に「なにを書くのか」ということの方が大切だと、私は考えています。たとえば、国語の記述型の設問でも、書くことが大切だからといって、きちんと文章を読まずに(理解せずに)いきなり解答用紙のマス目を埋め始めても、合格できるレベルの答案にはならないでしょう。特に先ほどご紹介した公立中高一貫校の作文問題では、字数が多いこともあるのですが、書き始める前に、出題文の文意をきちんと把握するところからスタートするように、と私は指導しています。


次に大切なのは、「何が問われているのか」をきちんとつかんだ上で、解答をつくるということです。問われていることに的確に答えていなければ、どんなに内容がよかったとしても、入試では減点になってしまいます。「登場人物の気持ち」を問われているのであれば、きちんと気持ちを表す言葉を書き込む、「なぜ」と聞かれているのであれば「理由」をきちんと書き込む、といった具合です。その一番重要なポイントを核にして、そこに必要な言葉を付け加えて答案を完成させるというのは、記述解法のテクニックの一つでもあります(余談ですが、その逆の方法もテクニックとしては存在します。制限字数にこだわらずどんどん書いていって、そこから不要な語句をそぎ落として完成させるという方法です)。


そして、それらの前提となるのが「書くことをいやがらない」という学習姿勢です。記述問題を見ると、それだけで「難しそう」と感じてしまって、手が(思考が)止まってしまうタイプの生徒がいます。記述力を向上させるためには、やはりある程度の慣れが必要になってきますし、慣れるためには「自分で書く」というトレーニングが必要です。自分で書かないと、いくらそのあとで模範解答を見ても、記述力は身につきません。記述の模範解答というのは「完璧な正解」になっています。当然小学生にはそのレベルの解答をつくることはできませんから、模範解答を読んだとしても、自分で書くための「参考」にはほとんどならないのです。


一度「書くこと」に対して苦手意識を持ってしまうと、払拭するのはなかなか難しいものです。まずは「書かない・書けない」原因を探るところからスタートしてみるのがよいでしょう。


原因の一つとして、「なんとなくわかってはいるけれど、正解になる自信がないから」という心理が考えられます。算数や国語の選択肢問題では、自分で出した答えが「正解であるという確信」を持てることがありますが、記述式問題の場合、その感覚はなかなか持てないはずです。また、上に記したように、記述の模範解答は(小学生にとっては)非常に高いレベルのものなので、「これが正解。ここまでの解答は書けない...」というように思い込んでしまうこともあるでしょう。そういった意識から、結局記述欄を空欄のままにしてしまうという生徒が多くいます。このケースの場合は、まずは書いたことを評価してあげてください。私が小3小4の授業で記述問題を扱うときには、10点満点で評価をするという方法を使います。ひとつの記述解答に対して、何人かの生徒に発表させて、一人ひとり「10点満点中の○点!」と評価をつけるわけです。学年やクラスによっても異なりますが、「なんでもいいから制限字数の半分以上書けていたら、3点以上!」というようなスタイルで進めていくわけです。これを続けていくと、宿題の記述欄を空欄のまま提出してくる生徒が減ってくるのです。参考にしていただければと思います。


国語学習の基本的な部分に関して、3回に分けて書かせていただきました。このシリーズはいったんここまでとさせていただき、次回以降は、また別のテーマでお話しさせていただく予定です。

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