『本に興味を持たせるには』
2012.09.19
読解力、読むことと書くことなどについて、続けて書かせていただいておりますが、『本が嫌いな子に本を読ませるためにはどうしたらいいでしょうか?』というご質問をいただきました。
まず、本が嫌いになってしまった原因から考えてみるのがよいと思います。本来、「本を読む」ということは娯楽であったわけです。私が小学生だった頃もそうでしたし、保護者の皆様の多くも本を読むことそのものを楽しんでいらした方が多いのではないでしょうか。図書館や本屋さんという場所も、非常に魅力的なところだったと思います。ではなぜ、今の多くの子どもたちは、本を読むことが嫌いになってしまったのでしょうか。ひとつにはテレビやゲームなどの読書よりも刺激的で、子どもにとって面白いものが増えてきていることが挙げらます。結果として、本や雑誌に興味を持つ子どもが減り、子ども向けの本や雑誌の出版そのものが減少していきました。小学館から発刊されていた『小学○年生』という雑誌を覚えている方もいらっしゃるでしょう。あの雑誌も一・二年生以外は休刊となってしまったそうです。
さらに、そんな形で本や活字に興味を失っているところに、読書そのものが「やらなければならないもの」になってしまうと、子どもたちは余計に嫌いになってしまいます。「本を読まなければならない」「読むべきものである」というような意識が、純粋に読書を楽しむという気持ちを奪ってしまうのです。
では、どのようにすれば本を読むことに楽しさを覚えるようになるのでしょうか。お子様のタイプや性格によって、合う方法は異なるとは思いますが、ここでは三つのアドバイスをさせていただきます。
一つ目は活字に触れさせる機会を増やすことです。本や雑誌でなくてもかまいません。文字を目にする機会を増やしてあげることで、活字に対する抵抗感が減り、自然と文章を読み進められるようになります。そういう点では「小学生新聞」のようなものも有効な手段だと思います。もちろん、お子様が興味を持っている分野の雑誌などでも構いません。
私が以前担当した生徒に野球が大好きな子どもがいました。その生徒は、中学・高校と思いっきり野球ができる学校に進学したいから早稲田アカデミーに入塾したと言っていました。そしてその生徒は、甲子園に出場するという明確な目標も入塾当時から持っていました。お母様と相談して野球の雑誌をすすめたところ、非常に興味を持って読み始めました。結果として、語彙力などは飛躍的に向上したのです。
二つ目は、上記の例にも関連するのですが、お子様が楽しめる本を与えてあげることです。読書というものは、楽しくなければ好きになりませんし、読んだ内容もしっかりと理解することができません。「おもしろくないなぁ」と思ってしまうと、文章の世界に引き込まれず、読みながら別のことを考えてしまったり、字面を目で追いかけるだけになったりしてしまいます。余談ですが、この「字面を目で追いかける」ことを「読む」ことと勘違いしてしまっている生徒は、当たり前ですが国語の成績が伸び悩みます。
大人はどうしても「よい」本を子どもに読ませたがります。そのような事情を踏まえてか、書店にも大人が子どもに読ませたがる本が多く並ぶようになります。読書に興味を持っていない子どもから見れば、それらの本にはあまり魅力を感じないでしょう。
そこで、上記の点を踏まえて、三つ目のアドバイスですが、本は子どもに選ばせてあげてください。できれば、何かのプレゼントやご褒美として与えるのがよいと思います。以前、毎年の誕生日に、プレゼントとは別に本を一冊買ってもらえるという生徒を担当したことがあります。幼稚園の頃から、本屋さんに行き自分で選んで買ってもらっていたそうです。『一年生の時には○○で、二年生の時には△△を買ってもらったの』と当時三年生だったその生徒は嬉しそうに題名を教えてくれました。
- 2017.07.07 『この夏を成功させる5つの方法 ~第2回クローバーセミナーより~』
- 2017.07.05 『夏をなめるな。』
- 2017.06.30 「国語の学習に関して③ ~記述力・表現力~」
- 2017.06.28 「国語の学習に関して② ~読解力とは~」