『偏差値とはどういうものか』
2012.09.26
保護者の皆様からいただくご質問で、『うちの子の偏差値はどれくらいですか』というものがあります。また『偏差値はどこまで伸びますか』というご質問をいただいたこともあります。どちらも、大変答えにくい質問なのです。
受験情報誌などを見ると、学校が偏差値ランク順に並んでいるので、偏差値というものがまるで固有の数値に見えてしまうことがあります。また、高校入試や大学入試の模試などでは、受験した生徒だけではなく、そこから推測される全国(もしくは地域)の受験生全体を想定した偏差値が標準偏差値というような名前で出されることもあるのです。その感覚で考えてしまうと、偏差値というものは、お子様固有の数値のようにも思えてしまうのですが、実はそれは大きな間違いです。テストごとに出てくる偏差値というものは、あくまでそのテストだけの結果であり、そのテストの受験者全体の集団(母集団)の中での相対的な位置を示すだけのものなのです。単純に平均点から上とか下とかではなく、成績の分布状態を加味することで、成績をよりわかりやすく評価するための方法です。詳しくは割愛させていただきますが、まずご理解いただきたいのは、お子様の成績を固定的に表すような数字ではないということです。
例えば、あるテストを受験して前回よりも偏差値が下がったとします。その原因としては、「勉強不足」「単元の理解不足」などの学習状況によるもの、「体調がすぐれなかった」「テストに集中できない環境だった」などのメンタル的なものがまず考えられます。お子様自身に起因するこれら学習状況やメンタル面の他、テストの種類によっても偏差値は変化するのです。
一つ目は、テストの難易度です。偏差値は平均点を50として考えますので、お子様が同じ点数を取ったとしても、平均点が変われば偏差値も変わってきます。特に得点がとても高い場合(低い場合もですが...)にこの傾向は現れます。95点を取って偏差値70をマークできていたとしても、次のテストが易化した場合(平均点が上がった場合)100点満点を取っても偏差値は65までしか出ないということもあるのです。
二つ目は、母集団の変化です。母集団が違えば、当然平均点も得点の分布状況も変わってきます。分かりやすい例を申し上げれば、中学受験のための塾に通っている生徒だけを対象にしたテストと、通塾していない生徒も含めたものでは、受験者全体の中での位置づけが変わってくることがお分かりいただけると思います。当然、出てくる偏差値も違ってくることになります。
小学校6年生になると、いくつかの模擬試験を受けていくことになります。この点を理解していない生徒は、主催者も母集団もテストの難易度も違う模試の偏差値を比較して、『上がった』『下がった』と一喜一憂してしまうケースも出てきてしまいます。どのテストが、どのような母集団で、どのような力を試すのに向いていて、どのレベルの中学校の合格可能性判定において信頼度が高いのか...というような点はなかなか難しいので、塾の担当講師にお聞きいただくのがよいと思います。
成績というものは、数字で出てくるのでとても気になると思います。その中でも偏差値は受験勉強を進めていくための、非常に重要な指標の一つであることも確かです。ですから、きちんとご理解いただき、正しく活用していただきたいと考えています。
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