『全体を見るという考え方②』
2012.10.17
10月10日の記事で、中学入試に向けて必要なのは、知識の学習(だけ)ではなく、思考方法を身につけることであると書かせていただきました。そこで重要になるのが、『全体を見る』という考え方です。今回はそのことについて詳しく説明したいと思います。
中学入試のために学習していく「思考方法」は、科目に特化したものもあれば、科目を横断したものもあります。『全体を見る』という考え方は、もちろんどの科目にもあてはまるものです。具体的にお話した方がわかりやすいと思いますので、例を挙げさせていただきます。歴史であれば、各時代の細かい人名や年号を覚えることよりも、大きな時代の流れをつかむことの方が大切であるのはお分かりいただけると思います。中学入試でもそういった傾向の問題が増えてきています。また地理分野では、各地方ごとに分けて学習するよりも、はじめに日本全体を把握した方が細かいところまで理解が深まりしっかりと定着を図ることができるはずです。
算数の文章題でも、ひとつの条件にこだわりすぎると、先に進めない場合があります。そのようなときは、全体を見て、図(状況図や線分図)を書くことが大切です。また、公式に当てはめるだけでは解くことができない求積の問題では、その形を細かく分ける(分割する)という考え方もあるのですが、逆にその形を含む大きな図形から余分な面積を引いて答えを出すという解き方もあります。国語の学習が一番分かりやすいかもしれません。文章全体の理解が不十分であれば、記述の解答もずれてしまいますし、選択肢も的外れなものを選んでしまうことになります。もちろん、細かい部分をきちんと読み取ることも必要なことではあるのですが...。小学校4年生の予習シリーズ下巻の単元をご紹介すると以下のようになっています。
第1回 説明文(1) 文を読む
第2回 説明文(2) 接続語・指示語
第3回 説明文(3) 話題と要点
第4回 説明文(4) 段落関係・要旨
ご覧いただいてお分かりかと思いますが、細かい部分から、段々と視野を広げていくような形で進んでいます。第1回では「ことばのきまり(文法)」を含めて、ひとつの文に注目し、第2回では「接続語・指示語」という、文と文を繋ぐ働きを確認し、第3回では段落の内容を把握し、第4回では段落と段落のつながりから、文章全体の要旨を理解する...という流れのカリキュラムになっているのです。今回のテーマである『全体を見る』という考え方は、第4回で学習しました。
さて、今回一番お話したいのは、その視点を保護者の皆様にもご理解いただき、ご家庭でご指導いただく際、活用して欲しいということなのです。例えば、上記テキストの第4回には、細部に関する問題も出題されています。それまで(第1回~第3回)の復習内容として出題されているわけですが、そこで学ばせたいことは、その問題ではないのです。どの科目でも小学校4年生くらいまでは、細かいところまで丁寧に学習し、解き方や知識をしっかりと覚えることで、各週の単元テストでは高得点をとることができます。しかし、その点だけにフォーカスしてしまうと、大きな視野で見るトレーニングがおろそかになってしまいます。
そして、実はこの『全体を見る』という視点や考え方は、中学入試だけの話ではありません。もうお気づきの方がいらっしゃるかと思うのですが、中学生になってからも、というより大人になって社会に出てからも『俯瞰する』ということは非常に重要なことなのです。お子様の将来のために、いま広い視野が持てるように、ご家庭でもご指導ください。
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