「『ら抜き言葉』は、間違い?②」
2013.04.26
前回の記事で宿題にさせていただいた以下の課題の解答から書かせていただきます。
A『昨日、風邪引いちゃって宿題がやれなかった。』
B『昨日、宿題終わらなくってテレビ見れなかった。』
Bの『見れなかった』という表現は、「ら抜き言葉」ですので、日本語としての正しい表現にこだわるのならば、『見られなかった』と言わなければなりません。たぶん、これはお分かりいただけたことと思います さて、Aの『やれなかった』という表現は文法的にはどうなるのでしょうか。 もともとは『やる』という動詞であることはお分かりいただけると思います。前回の内容を思い出していただいて、『やる』に『ない』をつけて未然形にしてみると、『やら(ない)』。『ない』の直前がア段ですから、五段活用となり、五段には『れる』をつけるはずですから、『やられる』。 「あれっ?」何か少しおかしい...と思われませんか。『宿題がやられなかった』というのはとても変な表現になってしまいます。 実は前回の最後に書かせていただいた『深い要因』はここからスタートになります。
簡単に申し上げると、五段活用に助動詞『れる』をつけた場合、の四つの意味のうち、「可能(~できる)」の意味はなくなってしまうのです。
もうひとつ、わかりやすい例を挙げてみます。 『書く』で考えてみましょう。 『書く』 → 未然形『書か(ない)』 → 『書か・れる』 いかがですか。『書かれる』という表現は、『書くことができる』という意味では使いません。 『先生が黒板に字を書かれる』(尊敬) 『いたずらな友達に、自分の教科書に似顔絵を書かれる』(受身) 『習字を習っていたので、きれいな字を書かれる』(可能???) では、『書くことができる』という意味では、どのような表現を使うのでしょうか。もちろんお分かりだと思いますが、『書ける』です。 この『書ける』は、可能動詞と呼ばれるひとつの動詞になります。もとの動詞が五段活用の場合、その語尾をエ段に直して「る」をつけると、可能動詞を作ることができます。やってみましょう。 『泳ぐ』 → 『泳げる』 『飛ぶ』 → 『飛べる』 『飲む』 → 『飲める』 『やる』 → 『やれる』
現在は日本語として誤用とされている「ら抜き言葉」を「言葉の進化」として考えていこうとするひとつの要因は、この可能動詞にあるのです。五段動詞は『れる』をつけても可能の意味にはならないので、可能動詞が存在します。上一段・下一段動詞は『られる』をつけると可能の意味になるので、もともとは可能動詞そのものが存在しなかったわけなのです。ところが、五段動詞と同じように語尾をエ段に変えて「る」をつける言い方も使われるようになっています。それが「ら抜き言葉」なのです。 『食べる』 → 『食べれる』 『起きる』 → 『起きれる』 『見る』 → 『見れる』 『着る』 → 『着れる』
もうお分かりいただけたでしょう。「ら抜き言葉」は上一段・下一段動詞の可能動詞として認めてもよいのではないか、という論議がいま起こっているのです。
少し話が細かくなりすぎました。申し訳ありません。私などは「ら抜き言葉」は気になってしまう方なのですが、それを生徒に注意すると「えっ?」という顔をされることも少なくありません。お弁当の時間に『ニンジン食べれないんだ』と言った生徒に『食べられない...だよ』、なんていう場面です。もちろん、その場で今回の記事のようなことを説明はしませんが...。
実は、「ら抜き言葉」と同じような(というよりも「逆」な)日本語の誤用も耳にすることもあります。「さ入れ言葉」とか、「さ足し言葉」などといわれるような表現なのですが、ご存知でしょうか。
『先生に借りた本を読まさせていただきます。』
『机の上にお花を置かさせていただきます。』
本来は『せる』をつけなければならない五段動詞に『させる』をつけてしまう言い方です。
そんなに細かいことにこだわる性格ではないのですが、国語の先生という立場からでしょうか、なんか気になってしまう言い方ってあるんですよね。
今週の週末からはゴールデンウィークになります。今年の日程は、三日間の平日を挟みますので「大型」連休とはいきませんが、ぜひお子様と一緒にお楽しみください。
このブログもカレンダー通りに「お休み」をさせていただきます。ご了承ください。次回は5月1日に『GW直前! 今からでも間に合う、お子様と行く日本一周旅行!』という題名で掲載させていただく予定にしております。お楽しみに。
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