四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

「勉強中にいつも赤ちゃんに泣かれる」

2014.04.16

最近はあまり科目的な内容を書かせていただいておりませんでしたので、今回は少し国語の文法的なお話しをさせていただこうかと思います。


「れる・られる」という助動詞について覚えていらっしゃいますでしょうか。昔は(いまでもありますが)高校入試の国語文法では頻出の問題でした。


問 次の例文の下線部と同じ用法のものを次から選び、記号で答えなさい。


例文 お母さんに、近所のスーパーまでのお使いを頼また。


ア 先生が黒板に大きくご自分の名前を書かた。

イ 虫の声を聴くと、小学生のときのことが思い出される

ウ 大人になって、苦手だったピーマンが食べられるようになった。

エ おしゃべりをしていたら、先生に大きな声で叱らた。


中学校では「れる・られる」の意味として「受身・可能・自発・尊敬」の四つを教わります。小学校の指導要領では文法的な用語は使いませんが、文の意味をきちんととらえるという観点から扱われ、中学入試でも出題されることがある問題です。


問題の例文は「~される」という「受身」の意味で使われています。選択肢は、ア「尊敬」、イ「自発」、ウ「可能」、エ「受身」となりますので、正解はエとなるわけです。「れる・られる」に関する基本的な問題は上記のようなものなのですが、付随して「ら抜きことば」に関連する問題や、「可能動詞との見分け」などの応用的なものが出題されることもあります。


さて、今回の記事の題名となっている「勉強中にいつも赤ちゃんに泣かれる」の「れる」の用法は、上記の四つの意味のうちどれにあたるでしょうか。これはさほど難しくはありません。「受身」です。ただ、なんとなく不思議な感じを受けませんか。実はこれは「れる・られる」がつく動詞に秘密があるのです。ここからはかなり国文法の専門的な部分になっていきます。


この文で「れる」がついている「泣く」という動詞は自動詞です。自動詞は本来、目的語を伴わなくても文意が伝わる動詞です。主語と述語(自動詞)だけで文が成り立ちます。「赤ちゃんが泣く」という文が作れるわけです。


一方で他動詞は目的語が必ず必要になります。「叱る」という動詞を例にとってみましょう。「先生が叱る」というだけでは、その対象が誰であるかがわからず、文として成り立たないことがお分かりいただけると思います。「先生が生徒を叱る」というように、目的語が必要になるのです。そして受身の形の文章になる場合、この目的語が主語になり「生徒が先生に叱られる」という形になります。ですから、受身の文で「れる・られる」がつくのは他動詞になるのが普通なのです。


では自動詞に「れる・られる」がついて受身になる場合はどんな場合なのでしょうか。いくつか例を挙げてみます。


●「飛行機が飛ぶ」→「頭の上を飛行機に飛ばれる」

●「雨が降る」→「雨に降られる」

●「目の前の人が立つ」→「目の前の人に立たれる」


おわかりいただけたでしょうか。実は自動詞に「れる・られる」をつけると、そこに「ちょっと困ったな」とか「迷惑だな」といったニュアンスが付加されるのです。「飛行機が頭の上を飛んでいてうるさいな」「(傘を持っていないのに)雨が降ってきて困ったな」「目の前の人が立っていて邪魔だな」という、ちょっとした意味合いが含まれた言い方になるわけです。


いろいろと細かく書いてきてしまいましたが、小3・小4の生徒の皆さんに、細かい文法的な知識が必要なわけではありません。上記のレベルまでの文法的内容理解は、最難関中学受験生にとっても必要ではないでしょう。ただ、早い段階から意識しておいていただきたいのは、文のニュアンスなのです。


日本語は非常に繊細な言語だと言われます。他言語の場合、迷惑であったり不愉快であったりするときに、その意味合いの単語を使わなければ伝わらないと聞いたことがあります。しかし、日本語はちょっとした言い回しで(直接的な言葉を使わなくても)、ニュアンスを伝えることができるのです。「れる・られる」の例だけではなく、そういった言い回しやニュアンスを的確につかむことができるようになることを意識して、ご家庭でもお子様と接していただければと思います。

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