『お友達と比較をしない』
2014.10.29
お子様を叱るときに(ときにはほめるときにも)、「○○ちゃんはできているのに」などと他人と比較するのはよくないと言われます。誰が聞いても「なるほどなぁ」「その通り」と思われることでしょう。自分に置き換えてみても、欠点やできていないことをそのように評価されれば、決してよい気持ちにはならないからです。
それではどのように叱れば(ほめれば)よいのでしょうか。私は「過去のお子様の状況と比較して評価する」ということをお勧めしています。半年前にはできなかったことができるようになっていれば、そこをほめてあげる。そうすることで、お子様の「やる気」は高まっていくはずです。
以前、小学校3年生の算数を担当していたときに、フリーハンド(定規を使わずに)でまっすぐな線を書くことが苦手な生徒がいました。その生徒はノートに線分図を書くときに、どうしても曲がってしまって、何度も消して書き直していました。ご家庭でも練習をしていたようです。ある授業のとき、少しうまくなっていたので「図を書くのがうまくなったね」とほめてあげました。少し前のノートのページと比べて、「このときよりもずっとよくなっている」と話をしたところ、とてもうれしそうでした。それ以来、その生徒は算数がとても好きになり、成績も向上していきました。
「うまくなった」と書きましたが、実はその時点でも標準的なレベルまでは到達していませんでした。クラスの中にはもっとうまく書くことができる生徒は何人もいました。だからといって、「以前よりもよくなっている」ことを評価せずに、他の生徒と比較をして「まだ足りない」と評価をしてしまえば、きっと悲しそうな表情になったことでしょう。
偏差値は母集団と平均点で決まる値です。つまり、他の受験者と比較がされている値ということです。もちろん、入学試験もライバルとの競い合いです。そう考えると「他者と比べて」という観点も必要になりますが、それは大人の視点です。特に小3~小4の発達段階では、友達やライバルを意識するよりも、親や先生という「上」の存在への意識が強い時期ですから、「誰かと比べられて自分の劣っている点を指摘される」ということは、自分のすべてを否定されたように感じてしまう危険性もはらんでいるのです。
お子様は日々成長していますから、過去の状況と比較をすれば、ほとんどの場合で「ほめてあげる」ことができるはずです。「子どもをほめて育てた方がよいとよく聞くのですが、なかなかうまくできなくて...」と、先日のクローバーセミナーのアンケートにご記入いただいたお母様がいらっしゃいました。このような視点でお子様と接していただければ、お子様の成長を感じることができ、きっとたくさんほめてあげられると思います。
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