『叱る言葉』
2014.12.05
早稲田アカデミーでは「私語のない緊張感のある授業」を行っています。しかし、子どもですので、ときには「私語」「おしゃべり」が出てしまうことがあります。そのような場合は、やはり厳しめに注意をすることになります。その注意の言葉ですが、以下のようなものがあります。
口を開くな!
口を開かない!
口を閉じろ!
口を閉じなさい!
口を閉じる!
少し国文法的に解説させていただきます。文法の解説が今回のテーマではありませんので、読み飛ばしていただいてもかまいません。
→開く(動詞・終止形)+な(禁止の意味の終助詞)
→開く(動詞・連用形)+ない(打消しの意味の助動詞・終止形)
→閉じる(動詞・命令形)
→閉じる(動詞・連用形)+なさる(補助動詞・命令形) ※「なさいませ」の省略形
→閉じる(動詞・終止形)
ここで①と②は「開いてはいけない」という意味の表現ですし、③~⑤は「閉じるようにしなさい」という表現です。そして、文法的に考えると面白いのは②と⑤なのですが、おわかりになりますでしょうか。それ以外の表現に関しては、命令・指示・禁止・注意などの意味が文法的にもはっきりとしているのですが、②と⑤は「終止形」なので、文法的に考えるとそこには命令・指示的な要素は含まれないのです。しかし、その言葉を発した時の状況や、言葉のニュアンス・表情などで、命令・指示的な要素が加わります。ここが日本語の難しいところでもあり、面白いところでもあると、私は個人的に思ったりもするのですが...。
私は小学生の授業のとき、この⑤の表現をよく使います。身体や声が大きいこともあり、小学生の生徒からは「怖い」と思われがちです。そんな私が「口を開くな!」「口を閉じろ!」と大声を出せば、生徒たちは萎縮してしまうでしょう。そこで授業前に教室がざわついていたときなどは、口に人差し指を当てて「はい!口を閉じる」とやってみます。
もうひとつ、よく使うのが「口を閉じよう!」という表現です。また国文法になってしまいますが、「う・よう」という助動詞は、「推量・意志・勧誘」という意味を持っています。ここでの表現は広い意味での「勧誘」になるのですが、実際には命令・指示的に使っているわけです。
さて、保護者の皆様はどんな風にお子様に注意をしたり、指示をしたりしていらっしゃいますか。ここまででおわかりだと思いますが、文法的な命令形は非常に「強い」表現となります。言葉をかけられた受け手の側も傷ついてしまうおそれがある表現です。また、「~してはいけない」という禁止の表現も「強く」受け止められる可能性があります。そのようなことを少し頭の中に置いて、お子様と接していただければと思います。
また、「はり紙」で注意をするという場合も注意が必要です。たとえば、冷蔵庫に「開けたらすぐにしめなさい!」というはり紙がしてあったら、お子様はどのように感じるでしょうか。冷蔵庫を開けるたびに、お母様に叱られているような気持ちになるのではないでしょうか。注意の言葉は、声で伝えられるよりも、文字になっている方が冷たい印象を与えるものです。
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