『詩』
2014.12.19
本日の小3授業では「詩」を教えました。ちょうどこの時期は、小4のカリキュラムでも詩を扱っています。そこで今回は、私の小3小4生に対する詩の教え方について書かせていただきます。
詩を生徒に学ばせるにあたって、いくつか教えなければならないことがあります。「比ゆ表現」「体言止め」などの表現技法、「定型詩」「自由詩」「散文詩」といった詩の形式などは、もちろん知識として教え、定着させなければなりませんが、導入段階では、あまりそれらに重点は置きません。まずは、詩とはどういうものなのか、そこに使われている「言葉」がどのようなものであるかを意識させるところから授業を進めるようにしています。
詩を書くのはどんなとき?
今日の授業では、「とってもきれいな風景を見たとき、君たちはどうするかな?」という質問から始めました。生徒たちからは、「写真を撮る」「絵に描く」といった答えが返ってきました。最近はデジカメや携帯電話(スマホ)の普及により、小学生にとっても「写真を撮る」というのは一般的なことのようです。「じゃあ、もしカメラも紙も鉛筆もなかったらどうする?」と次の質問です。すると、ある生徒が「覚えておく」と答えました。「なら、とっても美味しい料理を食べて、覚えておきたいときはどうする?」と質問すると、今度はなかなか手が挙がりません。そこで、「きれいなものを見たとき、美味しいものを食べたとき、うれしいとき、楽しいとき、そんなことを記憶に残しておきたいときに、言葉を使う方法がある。それが『詩』なんだよ」と教えます。作者の心が大きく動き(感動)、それを残しておきたい、誰かに伝えたいと思ったときに、詩が生まれるということを伝えたいわけです。それが理解できれば、必然的に「作者の感動」はなにか、という詩の読解の本質につながるわけです。
詩は短いから、作者が伝えたいことも少ないのかな?
詩は「作者の感動」であるという点を理解させたら、そこに使われている言葉について考えさせます。散文と比較をすると、韻文(詩)は文自体が短く、使われている言葉も少ないです。ただ、作者が感動したことを伝えたいので、それはとても大きなもののはずです。とするならば、詩に使われている一つひとつの言葉は、普通の文章(散文)以上に大きな意味を持っていることになります。「ひとつの言葉でたくさんのことを伝えたい、だからこそ、詩を書くときにはいろいろな工夫をするんだよ」と表現技法の話につなげていきます。
「空にマシュマロがぽっかり浮かんでいる」という比ゆ表現を考えてみましょう。これをわかりやすく言い換えなさいという問題を出すと、多くの生徒が「空に雲がぽっかり浮かんでいる」というところで考えることを終えてしまいます。ただ、それだけでは「マシュマロ」という比ゆ表現をきちんと説明していることにはなりません。そこで、「色は」「形は」「どんな様子」...、と問いかけをしていくと、生徒たちの中に「マシュマロ」という言葉の持つイメージが膨らんでいき、作者は、ひとつの言葉にそれだけのイメージをこめて表現しているのだということが理解できるようになっていきます。
一方、説明的文章では、「言葉のイメージ」を膨らませるという考え方は必要ありません(時には必要になる場合もありますが...)。逆に「言葉を拡大解釈せずにとらえる」ことの方が大切です。高学年の場合は、その点も含めて(文章別の読解方法の違いも含めて)指導をするようにしています。
中学入試の国語では、詩を出題する学校は多くありません。詩の出題で有名な難関中学校としては、男子の筑波大学附属駒場中と女子の雙葉中(平成19年以降は出題されていません)が有名ですが、開成中でも今年(2014年入試)出題されました。上記に書かせていただいた、「作者の感動をつかむ」「言葉の持つニュアンスをつかむ」という読解手法は、詩の学習だけにとどまる考え方ではありません。つまり、詩の学習をしっかりと行うことで、国語力そのものレベルアップにつながるのです。
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