『心細い、ほほえましい、切ない』
2015.02.06
早稲田アカデミーでは、2月4日から新学年での授業が始まりました。順調なスタートを切ることはできましたでしょうか。まだ、きっと新学年の学習に戸惑うこともあると思いますが、学習をスムーズに進めるためにも早めにリズムをつかんでください。
今年の中学入試問題を見てみました。サンデーショックの影響で、受験者が増える学校は、それを予想してか「採点のしやすい」問題が多く出題されているところもありました。また、やはり合否に影響しそうな問題は、どの中学校でも「しっかりと考えることが必要な」ものでした。
開成中学では「やるせない」の意味を答えさせる問題が出ていました。小学生にとっては普段の生活で使うレベルの語彙ではないでしょう。「なんか、やるせないなぁ」なんて言っている小学生がいたら、それこそ「やるせない」気分になってしまいます。こういった気持ちを表すことば(心情語)は中学受験の国語においてはとても大切です。が、教えるのはなかなか難しいものでもあります。
表題にいたしました「心細い、ほほえましい、切ない」という言葉を例にとってみます。小学校3年生を対象とした場合、この中で一番教えやすい言葉と教えにくい言葉はどれだと思われますか。
一番教えやすいのは、「心細い」です。「○○さんが、学校から家に帰ったら誰もいなかった。お母さんはどこに行ったかわからない。だんだん外は暗くなってくる。家の中は電気もついていなく薄暗くなってきた。○○さんは、ぽろぽろと涙をこぼした。さて、このときの○○さんの気持ちを表す言葉を考えてみましょう」こんな風に問いかけます。生徒たちからは、「悲しい」「さびしい」などの答えが返ってくることが多いですね。「悲しいはちょっと違うかなぁ。さびしいは近いけれど...。」そんな風に声をかけながら、「不安」という言葉を引き出したりします。そして「不安でさびしいようなときに使う言葉」として、「心細い」を教えるわけです。
生徒たちにも具体的なイメージを持ちやすいのです。そんな気持ちを感じたことがあるかを聞くこともあります。よく出てくるのは「迷子」になったときなどですが、小学生の生徒であれば、多かれ少なかれ「心細い」経験をしたことがあるので、「すっと」入っていきます。
一方で一番教えにくいのは、「ほほえましい」です。小学校3年生くらいでは、自分で誰かを「ほほえましい」と感じた経験は普通ないでしょう。まだまだ、大人から「ほほえましい」と思われる年代なのですから。「ほほえましい」という表現は、自分よりも大きく年下の対象を見て感じる気持ちです。ある意味、「大人の感情」ということができます。小3であれば、赤ちゃんを見てもせいぜい「かわいい」と感じるのが普通です。その「大人の感情」を理解させるのが難しいというわけです。
ただ、中学受験の国語の教材には「一所懸命に○○をやっているわが子を見てほほえましく感じている」といったような記述が模範解答に書いてあったりします。普段生活をしている中で、小学生が感じる感情ではなくても、「こういう場面ではこういう感情を抱くものだ」と教えることも必要になってくるわけです。
「切ない」というのも、そういう意味では難しい感情です。小学生で「切なさ」を感じている子どもがいたら、それはそれでやはり少し違和感がありますよね。
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