「むずかしいことを簡単に教える ~講師として心がけていること①~」
2015.09.09
今回から何回かにわたって、私が授業を進めるうえで「心がけていること」をご紹介していきます。小学生を指導する場合には、中学生や高校生を教えるよりも、いろいろなことに留意しなければなりません。
大人にとっては良い学習方法・指導方法だとしても、精神的成長過程にある子どもにも合うとは限らないのです。そこで、それぞれのお子様に合った指導が必要になるわけです。今回書かせていただくのは「講師として私が心がけていること」ではありますが、ご家庭でお子様の宿題などをご覧になる際のヒントにもなると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
お子様の成長段階を考えると、進学塾で扱っている学習内容は、「むずかしい」ものになります。だから、それを教えるときには、授業に参加している生徒の視点や考え方に合わせて、なるべく噛み砕いてわかりやすく教えることが必要になります。当たり前のことなのですが、それが意外に難しいのです。ともすれば「簡単なことを難しく教える」ということになってしまいます。中学受験のためのテキストに載っている解説や模範解答は、お子様にとっては「むずかしく」書かれていることが多いはずです。もしそれらを読んで完璧に理解できるのであれば、極端な話、塾に通って「教わる」必要はないわけです。ですから、テキストに書かれている通りに教えてしまうと「むずかしいことをむずかしく」教えていることにしかならないのです。そうならないために、私は授業で教える際は、生徒が読んだだけでは、きちんと理解できない内容を、「わかりやすく」伝えることを心掛けています。
では、どのように教えれば、生徒にとって「わかりやすく」もしくは「簡単に」なるのでしょうか。一番大切なのは、生徒の内的状態を理解することだと、私は思っています。そのために私は、生徒が学習する単元に関して、どのような知識を持っており、どんな切り口で説明すれば「わかる」のかを考えることから授業準備をはじめます。細かい点ですが、指導する際に使う言葉などにも気を配らなければなりません。
たとえば、小4の国語では主語・述語・修飾語の学習をします。一応「文節」という言葉も扱っているので、生徒たちは聞いたことがある言葉ではあるのですが、「どの文節が主語を修飾しているかを考えなさい」というような発問をしてしまうと、「文節ってなんだっけ...?」となる生徒も出てくるわけです。算数で言えば「連除法」という言葉があります。「連除法」とは、公倍数や公約数を求めるときに使う、わり算の筆算を逆さまにしたような計算処理方法です。テキストにも「連除法」という言葉は出てくるのですが、この言葉自体を覚えさせる必要はもちろんありません。
一方で、クラスや生徒によっては、一段階上の言葉をわざと使う場合もあります。これも生徒の状況を把握した上で、思考力や語彙力を高めるために、もしくは「ちょっとむずかしいことを教えてもらった」という気持ちにさせるために、あえてその学年としては難しい言葉を使った方が効果的だと考えてのことです。
ご家庭でお子様を指導する際も、ぜひ「むずかしいことを簡単に」という点に関しては、心がけていただければと思います。保護者の皆様であれば、テキストや解答の解説を読めばご理解いただけるはずですが、それをそのままお子様にお伝えいただいても、うまくいかないことが多くでてくるでしょう。どのように「噛み砕く」とわかってもらえるのか、そんな風に考えることで、お子様との距離も縮まると思います。
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