「今週、必ず身に付けなければならないことは ~講師として心がけていること②~」
2015.09.11
前回に引き続き、今回も私が生徒を指導する上で「心がけていること」について書かせていただきます。前回のテーマである「むずかしいことを簡単に教える」ということを実践するためには、今回紹介する「教えるべきポイントをしぼる」という点はとても重要になってきます。
中学受験カリキュラムでは、毎週新しい単元の学習を進めていきます。どんどん新しい事項が出てくるため、追いかけられているようなせわしなさを感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。以前にも書かせていただきましたが、毎週新しく学習する内容を完璧に定着させなければならないというわけではありません。なぜかというと、中学受験カリキュラムでは単元が少しずつ範囲を広げ、レベルを上げながら、繰り返し出てくるので、再度学習する機会が必ずあるからです。つまり、「積み残し」が前提となっているカリキュラムなのです。「なんとなくわかってはいるが、自分ではまだできない」という部分を、私は「積み残し」と表現しています。学習を進めていく上で、この「積み残し」はとても大切なのです。なぜなら、まだ自分ではできなくても一度経験しておくことで、次に同じような単元が出てきたときに定着が図れるように、カリキュラムが組まれているからです。
さて、上記のように「積み残し」が前提となっているわけですから、すべてのことを完璧に教え込むことは通常しません。お子様の習熟度によっても異なるのですが、テキストに載っている問題をすべて完璧に(演習から解説まで)仕上げるのは、時間的にも難しいですし、なによりもお子様にとって大きな負荷がかかってしまいます。そこで、教えるべきポイントを絞ることが大切になるのです。そのときに考えるのが、今回のテーマである「今週、必ず身に付けなければならないこと」がどこか、という点です。
たとえば、国語は毎回の学習テーマが絞られています。ちょうどこの時期(9月前半)の小4カリキュラムでは「説明文」を扱っていますので、それを例にとってお話ししましょう。予習シリーズ第2回のテーマは「接続語・指示語」です。説明文では非常によく出題される単元です。接続語にしても指示語にしても、どちらかというと文章中の細かい範囲(細部)を丁寧に読み込む必要があります。一方で、第4回で扱う「要旨」は文章全体の把握がポイントです。しかし、それぞれの回のテキストやテストの設問は、それらの(その週に扱うテーマの)問題だけで構成されているわけではありません。「接続語・指示語」の回の設問に、文章全体の把握が必要な問題も出題されているわけです。もちろん、そういった問題も解かせ、解説もするのですが、どこに解説(指導)の重点をおくかは、その週ごとに変えなければならないのです。
算数の話もしておきましょう。小3で「和差算」と「分配算」が出てきます。この単元を初めて扱うときに心がけているのは、「線分図をきちんと書かせる」ということです。まずは数量を線の長さで表すことに慣れさせ、次にどの長さが等しいのかがきちんとわかるように書かせる、ここまでがファーストステップです。その週に定着させるべき最低限かつ最大のポイントです。ただ、これだけでは自分で文章題を解ききる(正解までたどり着くことができる)ようにはなりません。自分で解けるようにならなければ、テストで得点になりませんので、学習に対するモチベーションも当然下がってしまいます。そこで、テストで高得点が取れるようにしていくことも必要なのです。それがセカンドステップということになります。このセカンドステップからは、クラス・生徒によって扱うべきレベルが変わってきます。ファーストステップまでで基本的な問題が解けるようになっている生徒には一段階上のレベルの問題にチャレンジさせ、基本的な問題を自分で解くところまでいっていなければ、それを反復して演習させるというように。
ご家庭で学習をご覧になる場合(特に小3・小4では)、その週のポイントが定着しているかどうかという視点をお持ちいただくのがよいと思います。ポイントはわかっているようだがケアレスミスをしてしまう、応用問題で間違えてしまう、というような場合は大きく心配されることはないでしょう。ただ、なかなかそのポイントがわかりにくい場合もあると思いますので、ご不安な場合は担当講師までご相談いただくのがよいでしょう。
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