『無限の可能性を...』

2015.11.11

私はセミナーや保護者などで、「大切なのは、子どもの可能性を奪わないこと」という話をします。また、生徒たちに対しても「君たちが勉強しているのは、いま持っている可能性をなくさないようにするためなんだよ」と言っています。

「子どもの可能性を伸ばす・広げる」という言葉を耳にすることがあるのですが、「子どもの可能性」は無限に広がっているはずです。生まれたばかりの子どもは、将来、医者や弁護士や宇宙飛行士、そして、スポーツ選手や芸術家...、何にだってなれる可能性があるわけです。しかし、成長していく過程の中で、いくつかの可能性が消えてしまったり、薄くなってしまったりすることがあります。そして、親が子どもに与える環境によっては、知らず知らずのうちに、その芽を摘んでしまうことがあるのです。

お子様の適性を見極め、その長所を伸ばし、進むべき道をある程度定めて導いてあげることも、親の大切な役割の一つです。しかし、まずはすべての可能性を考えて、なるべくその可能性の幅が狭まらないように成長を後押ししてあげることが大切だと、私は考えています。適性だけではなく、お子様自身がやりたいことを見つけたときに、それを目指すことができるような環境を整えてあげることが重要なのです。

小４から小６まで担当していた女の子の話です。その生徒は、国語がとても得意だったのですが、お母様はよく『両親ともに理系なのに、算数が苦手だなんて...』とおっしゃっていました。結局、入試まで国語は得意、算数は苦手という図式は変わらなかったのですが、努力の結果、第一志望校への合格を果たしました。中高６年間、彼女がどのような生活をし、どのように学んでいったのか、詳しいことは分かりません。ただ、大学は医学部を受験し、見事現役で合格。わざわざ私の校舎までそのことを報告しに来てくれました（当時その生徒を教えていた校舎から異動し、かなり遠方の校舎になっていたのですが...）。彼女の話によると、高校で数学・理科の成績が伸びたそうです。また、小学校のころに得意だった国語（現代文）もずっと好きで、受験勉強の気晴らしは読書だったそうです。

その生徒と話をしていて感じたのは、中学受験のときに苦手な算数を「嫌い」にならなくて良かったということです。もし、あの時、「算数は苦手だから嫌い」と思い込んでしまっていれば、きっと大学で理系の道には進まなかったでしょう。

私が小学校３年生・４年生の授業で一番心がけているのは、単に知識や解き方を覚えこませることではなく、しっかりと理解させ、さらにそこから「考えさせる」ということです。将来の可能性を狭めないために、頭の使い方や考え方の土台ができあがる小学校中学年までに、しっかりとしたトレーニングを積んでおく必要があるでしょう。

また、精神的にも肉体的にも一番成長するのが中学・高校時代です。ですから、その６年間をどう過ごすかで、後の人生の可能性は大きく変わってきます。「お子様に合った環境を選ぶ」、それが中学受験を選択する一番の目的だと私は考えています。

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