『言葉のイメージ』
2015.11.13
言葉のイメージを正しくつかみ、広げていくという感覚は国語の学習を進めていくにあたって、とても重要なポイントになります。たとえば、「たんぽぽのような人」という表現があります。大人であればすぐにイメージできる言葉ですが、小学生にとってはなかなか難しいことなのです。私は、授業で扱うときには、他の花と比較して考えさせます。具体的には、同じ花でもイメージが違う「ひまわり」などを例に挙げ、「共通点は何?」という質問からスタートします。すると、「黄色い花」「よく見かける」などの答えが返ってきます。と同時に、生徒たちの頭の中で、「相違点」も意識され始めます。「花の大きさ」「咲く季節」「咲いている場所」...。そこで、生徒たちがイメージしやすい人物像を持ち出すこともあります。
「たんぽぽとは□□の花だから、△△のような人を指しているんだよ」と言葉で教えてしまうのは簡単です。しかし、そうすると「たんぽぽのような人というのは△△な人なんだ」という知識にはつながるかもしれませんが、そこでストップしてしまい、他の言葉が出てきたときに、自分でイメージすることはできないでしょう。
秋は「空が高く」感じられるといわれることがあります。以前、小4の生徒たちに、『秋の空が高いのは知っている?』と聞いてみたのですが、残念ながら、ちょっと不思議そうな顔をされてしまいました。そして、『空はいつでも高いじゃん...』、『夏とあんまり変らないよ...』、という感じの答えが返ってきたので、『そんなことないよ、ちゃんと晴れた日に空を見てごらん』という話をしました。
ここからは理科の話になるのですが、秋の空が高く感じられるのには、いくつかの理由があります。ひとつは、空気中の水蒸気が少なくなるため、空気が澄み、空の青さが濃く見えるからです。もうひとつは、夏と比べると上昇気流が弱くなるので、入道雲のように地面から近い雲ではなく、空の高いところに多くの雲ができるからです。これらは地学分野であり、早稲田アカデミーでは小学校5年生で詳しく学習します。
中学入試でも、このような身近な現象から出題されることがあります。先ほどの雲の話で、渋谷教育学園幕張中学校の問題を思い出しました。その問題は、天気予報に関する文章があり、「なぜきれいな夕焼けの次の日は晴れやすいのか」を考えさせるものでした。簡単に解説をすると、夕焼けが見えているので、日が沈む方角である西の空は晴れているはずです。日本の天気は、偏西風などの影響で西から東に変っていきます。だから、西の空が晴れていると、次の日は晴れやすいのです。面白いのは、この問題が、「理科」ではなく「社会」で出題されていたということです。『自調自考の力を伸ばす』という教育目標を掲げられている学校らしい出題だと思います。
「空が高い」、このような表現のイメージをつかむためには、自分自身で経験することも必要です。「たんぽぽ」でも「秋の空」でも実際に見たことがなければ、イメージをつかむことなどできるはずがないのです。つまり、その言葉を聞いたときに『たしかにそうだな』と思えなければならないのです。そこで大切になってくるのが、机の上にテキストとノートを広げて学習するだけではなく、普段から「しっかりととらえ」「考えていく」習慣を身に付けることです。
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