「失敗したくない...」
2016.04.15
前回の記事で「失敗させたくない」という親の気持ちについて書かせていただきました。今回は「失敗したくない」という子どもの気持ちについて、考えてみたいと思います。
「宿題が終わったところでマルつけをすると、バツがついたとたんに機嫌が悪くなる」というご相談をいただいたことがあります。また、「バツがたくさんつくと勉強に対するやる気もなくなって宿題を途中で放り出したり、塾にも行きたくないと言い始めたりする」というお話もうかがったことがあります。
小学校低学年~中学年のお子様は、もともと「ほめられたい」という気持ちが強いものですから、宿題などは「完璧」に仕上げることを目指します。この年齢のお子様は、精神的には未熟ですし経験も少ないので、「これは間違えてもしかたない問題だな」という、よい意味での「妥協」ということができないのです。さらに中学受験を目指して塾に通い始めたお子様ならば、学校では標準以上の成績の方が多いはずですので、「宿題ができない」「たくさんバツをつけられた」というような経験も少ないでしょう。そう考えれば、「できなかった問題がたくさんあった」という事実は、お子様にとっては大人が考える以上にショックなもののはずです。感情のコントロールが未熟で、まだ「甘え」も残っている年代のお子様が「宿題ができないことで癇癪を起こす」というのは、ある意味当たり前のことなのです。
このような時、親はどうすればよいのでしょうか。難しい問題が解けなくて機嫌が悪くなるのですから、簡単な問題だけを解かせるようにすればよいのでしょうか。この対応が適切ではないことは、なんとなくお分かりいただけることと思います。中学受験を目指すという視点で考えればもちろん論外ですが、そうではなかったとしても「できる問題」だけを与えていくのは、お子様の成長にとっても良いことではありません。
では、親が「手取り足取り」リードをして失敗しないように導く、という方法はどうでしょうか。「問題を解く」ということで考えれば、わからない問題の「解き方を教える」ということになります。教えるということ自体が悪いわけではないのですが、一からすべてを教えてしまうと、結果お子様は自分で考えることをせずに、「わかったつもり」で終わってしまうことにもなりかねません。
私は、「自分で考えて失敗することで、次からは同じ失敗を繰り返さないようになっていく」ことが、「学習」の本質のひとつだと考えています。ですから、お子様が癇癪を起こしてしまった時には、その気持ちを受け止めてあげたうえで、「バツがついたからと言って全部が悪いわけではないよ」と、失敗することの大切さを教えてあげてください。お子様が自分のミスを受け止められたところで、「どこで間違えたんだろう」「どうすれば良かったのかな」と、お子様自身が考える過程を支えていただきたいと思います。
高校・大学へと進み、さらに社会に出て働くようになれば、「正解」が用意されていない問題や課題に直面することが多くなっていきます。当たり前ですが、このような時、正解まで導いてくれる存在はいませんし、一回で正解にたどり着けるとは限らないのです。たくさんの失敗を繰り返しながら、多くの試行錯誤を積み重ねて、大きな問題を乗り越えていく...。そのための土台をつくるために、高いハードルにどんどんトライしていってもらいたいと思います。
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