『ありがとう』
2016.08.19
リオオリンピックでの日本人選手の活躍が、毎日ニュースになっています。不思議なもので、いままでほとんど見たことがなかった競技でも日本人選手が出ていると応援してしまうものですね。今朝の吉田沙保里選手のレスリング決勝は残念でしたが、きっと大きなプレッシャーの中で戦っていたのでしょう。私などでは想像もつかないような辛さもあったことでしょう。心から大きな拍手を送りたいと思います。
メダルを取った選手のインタビューを聞いていると、必ず皆さんが口にするのが「家族への感謝」です。オリンピックという大きな目標に向けて取り組んできた過程を振り返ったとき、これまでの努力や苦労とともに、支えてくれた人のことが思い出されるのでしょう。「自分一人ではここまでくることはできなかった...」「多くの人の顔が思い浮かんで...」、そんな言葉をたくさんの選手が口にしていました。
毎年、入試風景をまとめた映像を作成しています。そのなかには合格者インタビューもおさめられています。そこでも生徒たちは必ず「両親への感謝」を口にします。「今まで教えてきてくれた塾の先生への感謝」を話す生徒もいるのですが、やはり一番は「両親」に対しての「ありがとう」です。
オリンピックの選手とその点は全く同じものだと、私は思います。日々の生活や努力の中ではなかなか周りに対する「感謝」の気持ちはわかないと思います。夏期講習会中に毎日塾でお弁当を食べていたとしても、それを作ってくれているお母さんに「ありがとう」と思いながら食べている生徒はほとんどいないはずです。お母さんが毎日お弁当を作ってくれるのは、子どもにとって当たり前のことでしょう。しかし、入試が終わって今までを振り返り、「お母さんは塾のお弁当をずっと作ってくれていたんだな」と思い返したときに、大きな「感謝」の気持ちが自然とわいてくるものなのだと思うのです。
夏期合宿のキャンプファイヤーで「ありがとう」という曲を演奏しました。合宿というひとつの「きっかけ」になるタイミングで、周りの人への「感謝」の気持ちに気がついてもらいたいという思いから選んだ曲です。曲を演奏する前にこんな話をしています。
「よく『両親に感謝しなさい』という言葉を聞くことがあると思う。君たちが毎日生活できているのも、塾に通えているのも、そしてこの合宿にくることができたのも、それはすべて君たちのご両親のおかげだ。そんなことは君たちも、実はわかっていることだろう。ただ、だからといって先生は君たちに『お父さんやお母さんにありがとうと言いなさい』という話をするつもりはない。『ありがとう』という言葉は誰かに言われて言うものではないはずだ。いまはわからないかもしれないし、こんな話をされてもぼんやりとしか理解できないかもしれないと思う。しかし、きっと君たちは両親に対して心の底から感謝の気持ちがわいてくることがあるはずだ。そのときには照れずに『ありがとう』と口にしなさい。その日のために、こんな曲を君たちのために選びました」
中学入試をするということは、志望する中学校への合格を手に入れることだけが大切なことではないと考えています。目標に向かって真剣に取り組むという体験の中で、将来につながるたくさんのものを手に入れることができるはずです。「周りの人たちへの感謝」という気持ちも、そのひとつではないでしょうか。大きく困難な目標に立ち向かうからこそ、自分ひとりの力ではできないことを理解し、支えてくれる周りの人々への感謝の気持ちもわいてくるのです。
吉田沙保里選手の「金メダルはお金で買えない」という言葉を聞いたことがあります。志望校の合格も、そこへ向けた努力も、そして身に付けた学力もすべて「お金では手に入れられない」ものです。そんな大きな目標に向かう生徒たちをこれからも応援し続けたいと思っています。
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