四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『自ら切り開く力』

2016.10.05

前回の記事で「ノーベル賞」について書かせていただきましたが、今年も「医学・生理学賞」を日本人が受賞するといううれしいニュースが入ってきました。昨年、世界の大学ランキングで東京大学が「アジア1位」から陥落したというニュースが流れたのですが、決して日本の「力」が大きく下がっているということではないのでしょう。


自然科学分野において「ノーベル賞」を受賞するほどの研究は、もちろん過去に発見されていないことがテーマなはずです。今回の「医学・生理学賞」も、(私は完全に専門外なので、ほとんどわかっていないのですが...)細胞が自分のタンパク質を分解して再利用する「オートファジー」と呼ばれる機能について、世界ではじめて解明したことが受賞要因になったという報道を見ました。大切なのは「いままで誰もやったことがないこと」を自らの力で切り開くということだと思います。


そして、そういう力は、これからの世界でとても大切なものになっていくのではないでしょうか。自然科学分野だけに限らず、人文科学分野においても、さらには学問や研究というフィールドではなく、社会人として生活していく中においても...。


社会に出てから直面する問題は「正解のない問題」といわれることがあります。学校で学ぶ内容は、過去に誰かが解明した問題であり、ある程度の正解が用意されています。また、その正解やそこに至る道筋を導いてくれる指導者(先生や教授)も存在しています。しかし、自分で深く考えることなく、その正解を鵜呑みにしていると、「正解のない問題」に対応する力は養われないと思うのです。


現代社会はめまぐるしく変化をしています。一昔前、ふた昔前であれば、過去に誰かが見つけた「正解」を理解し、その理解のレベルを高めることで社会に貢献することができました。しかし、今の、さらにこれから先の日本や世界においては、「自ら切り開く」力が大きく求められるようになっていくはずです。そこで必要になってくるのが、「知識偏重」から「思考力重視」へという教育改革なのです。


「自ら考え切り開く力」、そう聞くとなにか大変なことのように思われるかもしれません。もしくは高校生や大学生になってから身に付けていくような「学び方」のようにも。しかし、私はその力の土台をつくるのは小学生の段階だと考えています。そして、そのためのトレーニングも決して難しいものではありません。


「難しいな」と感じたときに、そこであきらめずに、もう一歩踏み込んで考えてみること。「自分にはできないから質問して解決させよう」と考える前に、もう一度はじめから考え直してみること。そんな気持ちで学習に向かえばよいのです。


そして、保護者の皆様にもご留意いただきたいポイントがあります。小学校のカリキュラム学習のように、その学齢で確実に身に付けることができる内容は別ですが、中学受験カリキュラムのように、その学齢では「難しい」レベルを扱うカリキュラムの場合は、「すべてをその段階で解決させよう」とお考えにならないことです。解答を見たり、先生や親に教わったりすれば、子どもの中では「なんとなく解決した」という気持ちになってしまいます。しかし、本質的には解決しているわけではありませんし、何よりも自ら「解決した」という経験にはつながりません。小学生の段階で学ぶのは、学習内容だけではなく、その先につながる「学び方」であることをご理解いただければと思います。もちろん、中学入試においても、そういう"学び方"をしてきたかが試されるような出題も増えてきているのです。

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