四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『新年度へ向けて③ ~言わせていただく~』

2017.01.13

小4予習シリーズ(下)第17回の国語の知識単元は、「敬語」がテーマでした。「『言う』の謙譲表現を問うテストで、息子が『言わせていただく』と書いてしまった」と、あるお母様からお話をいただきました。もちろん正解は「申す」ですから、解答としてはバツになります。ただ、小4の段階での「敬語」単元学習としては、問題ないレベルの理解ができているとお話しさせていただきました。


小3から小4の学習は、「頭の中にあるタンスに引き出しをつくるイメージで」という話をよくさせていただきます。科目ごと、単元ごとに、考え方や知識を収納する「引き出し」をつくってあげるという感覚です。


「敬語」の学習を例に説明させていただくと、小3から小4の段階では、「目上、目下」という感覚すらあいまいなもののはずです。ですから、まずは「相手が目上か目下かを意識して言葉を使い分ける」という新しい考え方を理解することが必要です。これが、「頭の中のタンスに『敬語』の引き出しをつくる」イメージです。この「引き出し」の中に必要な知識をきちんと分けて入れていくのは、小5からの学習になります。小4段階でしっかりとした「引き出し」がつくられていれば、そこに必要な知識を整理して入れることができるようになりますし、知識がしっかり整理されていれば、テストのときに取り出して解答することが容易になります。

繰り返しになりますが、「言う」の謙譲表現を「言わせていただく」と答えるのは正解ではありませんが、「謙譲」=「へりくだる」という理解ができているのですから、「引き出し」は用意されていると考えてかまわないでしょう。さらに、「申す」を覚えていなくても「言う」の謙譲表現として「言わせていただく」と答えることができたということは、敬語学習の本質をしっかりと理解できていると思うのです。


小学生の学習では、「わかる」と「できる」の違いについて語られることがよくあります。大人であれば「わかった」ことがすぐに「できる」けれど、成長過程にいる小学生はそうではない、というような話です。私は、「できる」ようになるためには頭の中のタンスにきちんとした「引き出し」がつくられていることが大切だと考えています。必要な引き出しができていて、そこに知識を整理して入れることで、それを取り出して使うことが可能になり、「できる」ようになるわけです。


余談ですが、動詞の中には「尊敬語」「謙譲語」として別の形を持っているものの方が少ないのです。たとえば、「食べる」の尊敬表現は「めしあがる」、謙譲表現は「いただく」という別の形に変わりますが、「置く」「持つ」などの尊敬・謙譲表現は別の形の動詞にはなりません。尊敬表現としては「お持ちになる」「持たれる」、謙譲表現としては「お持ちする」「持たせていただく」が一般的です。


さらに余談になりますが、この「〇〇させていただく」という表現には批判的な見方もあります。謙譲表現として誤りではないものの、使い方によっては「謙譲」以外の意が含まれて受け取られることもあるからです。また、少し回りくどくも感じられるものです。大人が使うときには気を付けなくてはいけませんが、小4の段階ではそこまで気にすることもないでしょう。一方で、この表現の誤用も最近よく耳にします。本来であれば「せる」をつけなければならない五段活用動詞に「させる」をつけてしまう形です。「置かさせていただく」「持たさせていただく」というような形です。これらは明らかな誤りですから、注意して学習する必要があります。


このように考えていくと、「言わせていただく」とお書きになった生徒はほめてあげていいようにも思えます。テストではバツなのにほめるというのは、少し抵抗があるかもしれませんが...。

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