「解き方を覚える」ではなく「自分で考えて解く」
2017.03.15
公立中高一貫校の入試報告会を今週の月曜日に渋谷駅近くの「渋谷区文化センター大和田さくらホール」で実施しました。私も講演者としてお話しさせていただきました。公立中高一貫校は、1998年の学校教育法の改正により認められ、全国的に設置されてきています。首都圏では、埼玉県立伊奈学園中学校が2003年に開校したのがはじまりです。そして2005年に都立で初となる公立中高一貫校、白鷗高校附属中学校が開校し、その翌年には小石川中等教育学校、両国高校附属中学校、桜修館中等教育学校、千代田区立九段中等教育学校などが開校しました。その後も開校が相次ぎ、昨年は千葉県に東葛飾中学校が、今年は神奈川県に横浜市立サイエンスフロンティア高校附属中学校が開校しました。現在では東京都内に11校、埼玉県に2校、神奈川県に5校、千葉県に3校の中高一貫校があります。
公立中高一貫の入試は高倍率で推移をしているのは皆さまご存知のことでしょう。首都圏全体で考えてみると、約2,500名の募集人数に対して応募人数は16,000名ほど、実に6倍を越える入試となっています。私立中学入試と比較をすると、適性検査当日の欠席者も少なく、また募集人数に対する合格者(補欠や繰り上げも含んで)数も多くはありません。私立中学の中には募集人数に対して、2倍以上の合格者を発表する学校もありますので、「見かけの倍率」と「実質倍率」が大きく異なるケースもありますが、公立中高一貫校の場合は、ほぼ見かけ通りの倍率となっています。
高倍率であっても応募者が多くいるのは、もちろんそれだけの魅力があるからにほかなりません。公立中高一貫校では、学校ごとに特色のある魅力的な教育方針を打ち出しています。そしてそれらの教育方針は、「知識偏重から思考力重視」へと舵が切られている大学入試改革(高大接続改革)にも直接つながるものです。
公立中高一貫校の入学者選抜では「適性検査」が行われます。学校の設立主旨からも「学力試験は行わない」ということになっており、算数・国語・理科・社会といった科目の学力を試すテストではなく、「適性検査」という科目横断的なテストになっているのです。作文・論文的な出題もあり、単に答えを出すだけではなくそこまでの思考過程を記述させたり、理科的な実験や社会の統計などから気がついた点をまとめさせたり、というような出題も多く見られます。
一見すると私立中学の入試問題とまったく違うもののように感じられるのですが、実は問われていることの本質は変わりません。理系問題(算数・理科内容の問題)でも、長い出題文の中から必要な条件をしっかりと見つけることができなければなりません。一方で必要のない条件や記載もありますので、そこは除いて考えることも大切です。そういった点に関しては、私立中学の入試問題とは違う「解き方」をしなければなりません。しかし、正解へとつながる道筋は、私立中学へ向けたカリキュラムで学習している科目の本質的な部分になるのです。現在、私立中学受験カリキュラムで学習をされている方は、その学習をしっかりと続けていくことが公立中高一貫校への合格にも近づく道だとお考えいただければと思います。
そして、実は公立中高一貫校だけではなく、難関私立中学受験についてもいえることなのですが、一番大切になってくるのは、「解き方を覚えるのではなく、自分で考えて解ききる」という学習姿勢です。初めて見るような問題に対して「見たことがないし、解き方もわからない」と考えることを止めてしまうのではなく、試行錯誤をしながら「自分で考えてみる」という気持ちをつくることが大切です。
- 2017.07.07 『この夏を成功させる5つの方法 ~第2回クローバーセミナーより~』
- 2017.07.05 『夏をなめるな。』
- 2017.06.30 「国語の学習に関して③ ~記述力・表現力~」
- 2017.06.28 「国語の学習に関して② ~読解力とは~」