『次郎物語』
2017.04.19
急に初夏のような陽気になりました。昨日、首都圏では26℃を超えて「夏日」になったようです。私の校舎にも半袖で授業を受けに来ている生徒が何人もいました。ついこの間まで「夜はちょっと肌寒い」なんて思っていたのですが、この気温の変化になかなか身体がついていけません。皆様もご自愛ください。
さて、今回は「教科書やテキストに書かれていないことも大切です」という内容で書かせていただきます。中学入試で出題される問題の中には「教科書やテキストに書かれていないこと」も出てきます。もちろん、テキストなどで学習したことが土台となっているのですが、その周辺知識や考え方についても興味を持って学んできたかが問われているのです。
たとえば、国語の文章読解では、単に書かれていることを読み取るだけではなく、様々な背景を理解することでより深い読解ができるようになるものです。中学入試国語の物語文の出典は、一時期、現代の小学生が主人公のものが多く取り上げられていましたが、最近では、舞台となっている時代や地域、主人公の年齢も様々です。今春の入試でいえば、フェリス女学院中学が下村湖人氏の『次郎物語』の文章から出題しています。実は2012年度の開成中学でも『次郎物語』は出題されています。時代的背景を含め、登場人物の考え方など、現代とは大きく違っています。両校ともそれらの点を理解して、根底にある人間としての心情を把握することが求められる出題となっています。ちなみに小学校5年生の予習シリーズ(上)第9回でも『次郎物語』が取り上げられています。
昨年度は武蔵中学で井上ひさし氏の『あくる朝の蝉』が出題されています。この作品は2011年度の麻布中学をはじめとして、過去にいくつもの中学校で取り上げられています。なかでも孤児院で暮らす兄弟が叔父さんの家に行く場面がほとんどの学校で選ばれています。やはり現代の小学生の生活とは異なる背景を理解したうえで、登場人物の心情をしっかりと考えることが求められる内容でした。このような文章を国語の授業で扱うときは、テキストに載っている内容や問題だけではなく、その周辺知識や背景についてもふくらませて話をするようにしています。
極論をすれば、テキストに書いてあること、模範解答や解説に書いてあることだけを教えるのであれば、講師の存在意義は薄いのではないかと考えています。もちろんテキストや解説は「難しく」書かれていますので、それをわかりやすく噛み砕いて教えるのも大切な講師の役目です。しかし、そこから一歩踏み込んで、テキストに書かれていないこと(特に大きな考え方や思考の方向性など)を、しっかりと教えていくことも必要なことだと考えています。そういった意味で授業はとても大切なものです。ご家庭では、直接テキストに書かれていないことでも、先生の話をしっかりと聞くようにお伝えいただければと思います。
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