『タブレットで調べる、辞書をひく』
2019.11.20
最近の小学生は、画面を見ると「指でさわる」「指でなぞる」といった行動をとる、という話を聞きました。スマートフォンやタブレット、さらに最近はゲーム機でも画面上を指で操作するものが増えているようです。私が子どものころにはブラウン管テレビの画面を触ったら怒られたものですが……。以前、「わからない言葉を調べるときに、辞書ではなくタブレットを使うことが多いのですが、タブレットに頼り過ぎていていいのか不安です」というご質問をいただいたことがあります。大人よりも子どもの方がタブレットを使いこなしている、上手に使っているというご家庭も多いようです。
さて、今回は「小学生がタブレットや辞書を使って言葉を調べる」のは是か非かという点について、触れさせていただきます。
結論から申し上げますと、文章を読んでいる途中で辞書やタブレットなどを使って、わからない言葉を調べるという点に関しては、あまりおすすめしていないのです。「調べる」という行為そのものは、もちろん悪いことではないのですが、ポイントは「文章を読んでいる途中で」というところにあります。
文章を読んでいるときには、当然そこに書かれている内容全体を理解しようとしながら読み進めていくことになります。説明的文章では論理的な思考回路が働いているでしょうし、物語や小説などでは登場人物に感情移入をしながら読んでいくわけです。しかし、途中でわからない言葉が出てくるたびに中断し、辞書などで調べると、そこまで働いてきた「思考の動き」そのものも止まってしまうことになります。言葉の意味がわかってまた読み始めたとしても、「思考の動き」がすぐに再開するわけではないことはご理解いただけるでしょう。結局、文章の全体像がしっかりとつかめないまま「読んだつもり」になってしまったり、もう一度初めから読み返すことになってしまったりするのです。
では、文章を読んでいてわからない言葉が出てきたときにはどうすればよいのでしょうか。大人が読むときと同じように、前後の内容や字面から類推していくことが必要になります。「たぶんこんな意味じゃないかな」と推測しながら、読み切るようにトレーニングを進めていくことが大切なのです。このトレーニングを積み重ねていくことも国語の大切な学習のひとつだと考えています。「言葉に対する感覚」を高めることにもつながりますし、さらにはその言葉を「自分の語彙」とすることにもつながります。調べた言葉よりも、自分で意味を考えた言葉の方が、頭の中にはしっかりと残るはずです。もちろん意味を間違えて覚えてしまってはよくありませんから、文章をすべて読み終わったあとで(もしくは問題を解き終えたあとで)、わからなかった言葉をチェックしもう一度調べなおすというところまでいければ、よりよい学習ということになります。
中学入試でも高校入試でも、試験会場に「辞書」を持ち込むことはできません。国語の問題を解いているときにわからない言葉があったとしても(というよりも入試の問題文では、わからない言葉の1つや2つは出てくるのが普通です)、そこで思考を止めるのではなく、言葉の意味を自分で考えながら読み進めることが必要になります。
さて、お子様は国語の文章を読んでいるときに、「○○ってどんな意味?」と聞いてくることはないでしょうか。一般的に私は3年生くらいまでであれば「聞かれたら答えてください」とお話ししています。「文章を読む」という一連の思考の流れを止めないために、パッと答えてあげた方がよいというのがその理由です。ここで「自分で調べてごらん」と進めてしまうと、「調べる」ことに思考がシフトしてしまうことになります。
4年生以上になってくると、「自分で考えて読んでみたら、と答えてください」というように切り替えていきます。上記のような「自分で意味を類推する」というトレーニングにつなげるためです。もちろんここは個人差が大きい部分です。それまでの読書経験や精神的な発達段階にもよりますので、お子様の状況を見ながら切り替えるようにしていただければと思います。
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