『「考え方」を身に付ける』
2022.01.14
早稲田アカデミーのカリキュラムでは、1月は現学年の「まとめ」という位置付けになっています。もちろん、学年・科目によっては三学期に新出単元を学習する場合もあるのですが、総じて「まとめ」学習をするとお考えいただいてよいでしょう。現学年の間に身に付けておかなければならないことを確認し、抜けがあればそこを埋めていくのが「まとめ」だとご理解ください。そこで重要になってくるのが、その学年の「なに」を身に付けさせておくことが必要なのかという点です。
国語を例にとって書かせていただきます。早稲田アカデミーの国語カリキュラムでは、学年が切り替わるタイミングで、テキストやテストの文章レベルが一段階上がります。旧学年の間に、その学年における読解の基本的なフォームを身に付けておくことで、新学年から文章の難度やレベルが上がっても、読み解くことができるようになるわけです。一方で、旧学年中の漢字や語句などの細かい知識を隅々まで覚えておくことはあまり意味がありません。それらの知識は、学年が上がれば自然に身に付いてくるものもありますし、知識事項などは新学年で再度扱うものも多くあります。
一言で言えば、現学年で出てくる「知識」や「解法」を覚えることが必要なのではなく、その学年で必要な「考え方」を身に付けることが大切なのです。
私が小学生の授業を行う場合に一番大切にしているのは「考え方を身に付けさせる」という点です。生徒たちは「解き方を知りたい」と、ある意味「安易」に質問に来ることもあるのですが、「解き方」だけを単純に教えるような質問対応はしないように心がけています。「問題を読んでどんな風に考えようとしたの?」と聞き返すところから始めます。自分で考えさせるようにして、そこから自分で「解き方」を見つけるようにさせるのです。ひとつの問題にある程度の時間がかかってしまうのですが、その「考え方」を理解できた生徒は、同じような問題を二度と質問に来ることはありません。一方で「解き方」だけを教えた場合、また同じような問題を質問に持ってくることが多いのです。
例を用いて説明いたしましょう。 算数の図形の問題でやたらと補助線を引いている生徒を見かけることがあります。補助線の引き方(つまり、補助線を引く場合の「考え方」)が身に付いていないわけです。三角形などの典型問題の場合、今までの経験から何となく「このあたりに補助線を引けば解けるかな」と引いた補助線でも解決する場合があります。しかしこれはその問題で偶然「当たった」だけで、その他の問題でも通用するわけではありません。 『三角形の線分比が問われているのであれば、面積の比を利用するか、相似を使うはずだ』 『この問題では面積は与えられていないので、相似になるはずだ』 『相似を作るのには平行線が必要になる』 『どこに平行線を引けばいいのだろうか……そうかここだ!』 このような思考過程が「考え方」ということになります。ここで正しい補助線を引けば、そこから先はスムーズに「処理」だけで正解まで行きつきます。ところが、先ほど申し上げた「解き方を知りたい」という生徒の場合、「どこに補助線を引けばいいかを教えてほしい」というところからのスタートになります。補助線を引くところを教えることは簡単ですし、それを教えてしまえば答えまでは行き着くので、生徒も安心します。しかし、次に同じような問題が出てきたときには、また悩むことになってしまうでしょう。
「考え方」と「解き方」という点に関して、簡単に書かせていただきましたが、指導法・教授法のある意味本質的な部分になりますので、文章で説明するのはなかなか難しい部分もあります。授業での指導に関しては、早稲田アカデミーの講師にお任せいただくとして、保護者の皆様に知っておいていただきたいのは、正解を出す過程として、まずは「考え方」があり、そこから「解き方」につながっていくのだというポイントです。「解き方」にだけこだわるのではなく、まずはどのように「考えるのか」というところを重視するように、ご家庭でもご指導いただければと思います。
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