『音読?黙読?』
2022.03.11
新学年になり新しいテキストになりました。国語の教材に出てくる文章もレベルが上がり、読み解くのに苦戦されている方もいるのではないでしょうか。学年が上がると出題される文章の「対象年齢」も上がります。また、文章量も増えますので、読解フォームもレベルアップすることが求められます。今回は「文章読解」について書かせていただきます。
私が小学3年生の国語の授業を行うときには、「文章を読み聞かせる」という手法をとることがあります。文章の内容がどれくらい「頭の中につくり上げられているか」を確認するという目的のためには、「読み聞かせ」は効果的な手法です。あえて、テキストは閉じさせたまま、しっかりと聞かせることで「授業を受けるときの集中力を高める」という効果もあります。
国語の読解力の基本は、もちろん文章に書かれている内容を理解することです。文章内容を理解するためには、頭の中で文章を組み立てることが必要になります。逆に、「問題を解くために読む」という意識が強くなってしまうと、頭の中に文章の全体像を構築する前に、「答えを書こう」という気持ちが先に立ってしまって、この部分がおろそかになってしまうことがあります。それが高学年になって、国語が苦手になってしまうケースの原因のひとつとなることもあるのです。
物語の「読み聞かせ」は、細部よりも「あらすじ」を理解することがメインとなります。特に小3・小4くらいまでであれば、細部よりも全体をとらえる思考を養う時期ですから、ときには効果的な手法になります。ご家庭でも、物語を読み聞かせたあとで、登場人物やあらすじについていろいろと質問をすると、文章内容がどれくらい理解できているかを試すことができるはずです。
さて、では自分で文章を読ませるときには「音読」と「黙読」のどちらがよいのでしょうか。「音読」にはさまざまな効果があります。文章を読むことに集中させる・声を出すことで元気になりやる気も生まれる・物語の会話文などは感情をこめて音読することで心情理解につながる……などです。特によく言われるのは、自分の声を自分で聴くことで、目で追いかける「黙読」とは異なり、より集中して脳が活性化するというものです。そして音読がうまくできるようになれば、文章を読むことそのものに自信が生まれる。さらに保護者の皆様が聴くことによって、思わぬ「つまずき」などに気がつくというメリットもあります。国語が苦手な生徒が「音読」をすると、助詞(て・に・を・は)を間違えることが多いのですが、それを矯正していくと、国語の成績が上がってくることがあります。
一方で、気をつけなければならないのは「音読」をしているときに、「正しく読む」ことだけに注意がいって、字面だけを追いかけてしまい、文章内容の理解にまで至っていないことがあるという点です。音読をさせたあとに、何が書いてあったかを確認してみるとわかるはずです。同じような文章を読み聞かせたときと比較して、理解度が低くなってしまうことが往々にしてあります。文章全体をしっかりと理解するという読解力向上だけを考えた視点でとらえると、「音読」よりは「読み聞かせ」の方が効果のあるケースもあります。
最終的にはもちろん「黙読」をして、文章全体を頭の中に構築し、さらに細部にも注意が払えるような読み方が必要になってきます。黙読をしているのに、頭の中では音読をしていて、その結果最後までいってもなにも頭に残っていない、そんな読み方にならないようにしてあげなければなりません。そのためには、いまお子様がどのように文章に触れているかを確かめて、その段階で一番効果的な読み方をさせていくことが大切なことなのだとお考えください。
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