『国際化社会へ向けて』
2022.05.20
最近、ニュースを見ていると海外の話題が多く取り上げられているように思います。ウクライナ情勢、中国や北朝鮮の新型コロナウイルス関連などもありますが、大リーグや海外サッカーチームでの日本人の活躍も、海外ニュースということができるかもしれません。
これまで、「NATO」という言葉を中学入試の社会問題で見かけることはあまりありませんでした。四谷大塚の予習シリーズでは、小6社会の上巻の最後「現代の日本と世界」という単元において触れられてはいます。「冷戦」「ソ連の解体」などと一緒に出てくるのですが、日本が直接的には関係しないということ、さらに軍事同盟であることなどから、日本の歴史や社会を中心として出題する中学入試では出題されにくかったのだと思います。ただ、今年は時事問題として出題される可能性が高いのではないでしょうか。
先日の小5の授業で、「新型コロナウイルスが終わったら行ってみたい国はどこ?」という質問をしてみました。「アメリカ」という答えが多いのではないかと想像していたのですが、多かったのは「イギリス」でした。「ベイカー街に行ってみたい」という女の子がいて、聞いてみたらやはりシャーロックホームズの影響のようでした。そのほかには「フランス」「パラオ」「オーストラリア」といった答えが返ってきました。保護者の皆様もお子様に聞いてみてください。意外な答えが返ってくるかもしれません。
私も久しぶりにパスポートを使ってみたいと思っています。コロナ禍の前までは、海外の提携塾での講演会などで、年に1~2回は渡航していました。
私が初めて海外に行ったのは、タイのバンコクでした。もう今から何十年も前になるのですが、学生の頃に、父親のお供で初めて飛行機に乗りました。当時、父は大学で国際経済・国際金融を専門に教鞭をとっており、その研究旅行(資料集め)の荷物持ちのような扱いで連れられて行ったのです。そのときの記憶はいまでも鮮明に残っています。深夜にバンコクの空港に着いたときのムッとするような湿った熱い空気、エアコンのないタクシーで市街地まで向かう真っ暗なハイウェイ、翌朝の市場での喧騒、見たこともない果実……。すべてが新鮮で、驚くというよりも、ただただあっけにとられていた、そんな経験でした。その際にはタイを拠点にして、当時はあまり日本人が行かなかったネパール、バングラデシュなどの国を巡ったのですが、それぞれの国で日本とは全くちがう人々の生活を目の当たりにして、大きなカルチャーショックを受けて帰ってきました。そのときの経験は私の中で、いまでも大きく残っております。
現在も国際化社会と言われていますが、いまの小学生が社会で活躍するころには、さらに世界はせまくなっているはずです。これからの日本や世界をけん引していく人材となるためには、国際人としての感覚を身に付け、外国語を使ったコミュニケーションができるようになることが必要になるのは間違いないことでしょう。もちろん語学の学習も大切ですが、私はそれ以上に「自分とは生活環境も文化も違う他者を理解し、許容する」という点がスタートラインだと考えています。これからの将来に必要となる「協働力」の原点も「他者理解」にあると思うのです。多様化し、とても速いスピードで進んでいく現代社会の中で、大きな成果は一人の力ではなかなか作り上げられないものです。高い能力とスキルを持ったメンバーによるチームがひとつにまとまり、意見を戦わせながらベクトルをそろえて進むことでより大きな力を発揮することができるのです。そのチームを引っ張る力、チームで協力して進める力が「協働力」と言われています。そして協働するためには、自分の意見や考えに固執するのではなく、他者の考え方をきちんと理解・把握することが大切なのは言うまでもないことでしょう。
私の中での初めての海外経験は、カルチャーショックであると同時に、世界にはさまざまな地域でたくさんの人々がそれぞれの生活を営んでいるということを肌で感じた、そんな記憶なのだと思います。自分とは全く違う環境で、まったく違う文化を持っている人々が本当に存在している、それを実感したといえばよいでしょうか。そのときの経験があったからかもしれません。海外に行くと観光地を見てまわるよりも、その国の人々の日常生活を見ている方が、ときにはその中に混ざる方が好きになってしまいました。
SDGsもそうですし、世界的な環境問題(カーボンニュートラルなど)も、そして世界的なコロナ禍も、これからの中学入試には出題されることになりそうな予感がしています。小学生のうちに、海外に興味関心を抱くこともおすすめしたいと考えています。
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