四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『春、「一歩踏み出す力」を身に付ける』

2023.03.31

算数で難しそうな問題や国語で字数の多い記述問題に出会ったとき、お子様はどうされていますか。テキストを開いたまま「固まって」しまっている、そんな状態になってしまうことはありませんか。


保護者の皆様からいただく相談の中に「家庭学習の時間はとっているのに、成績が上がらなくて……」というものがあります。たしかに机の前に座っている時間は長いのかもしれませんが、その間に「固まって」しまっている時間が長ければ、当たり前ですが学習効率は上がりません。結果として、時間はかけているのに宿題が終わらない、時間はかけているのに成績が上がらない、ということになってしまいます。


また、保護者の皆様からよくいただく相談として、「うちの子は集中力がないので……」というものもあります。私は「集中力がない」というのは決して悪いことではないと考えています。「集中力がない」というのは、「いろいろなことに気持ちがいってしまう」ということだととらえれば、「興味関心の幅が広い」と言い換えることもできるでしょう。そういうタイプのお子様は、精神的成長にともなって大きく伸びる要素を持っていると、私は考えています。


一方で「集中力がない」という表現を「集中して一つのことに取り組める時間が短い」ということだととらえれば、それはトレーニングすることで変えていくことができるはずです。そもそも小学生にとって「集中して取り組める時間」には限界があるものです。家庭学習だけではなく、学校での学習や習い事なども含めたトレーニングの中で、だんだんと「集中できる時間」は長くなっていくのです。


初めに書かせていただいた「問題を前にしてボーっとしてしまう」という状態は、「集中力がない」ということとは違う問題だと、私はとらえています。難しい(と自分で感じてしまった)問題を前にして「一歩踏み出す」ことができないでいるというイメージです。「一歩踏み出す」ことができない要因はそれぞれのお子様や問題によって異なるでしょう。「問題文が長くて難しそうだから、読む気になれない」「苦手なタイプの問題だから、きっと自分には無理だとあきらめてしまっている」「初めて見る問題だからどう考えればよいかわからない」……などなど。いずれにしても、その時点で思考を止めてしまっているわけですから、学習という点においてはムダな時間を過ごしてしまっていることになります。


保護者会などで、「小学生が問題を考える過程」を「迷路の中を手探りで進んでいく状態」に例えてお話しさせていただくことがあります。分岐点に立って、いくつかに分かれた道の中からゴールにたどり着く道をあれこれと考えて進んでいるようなイメージです。大人から見れば、ゴールまでの最短距離(問題の解き方・考え方)はすぐにわかることが多くあります。迷路を上から俯瞰していて全体像が見えているような感覚といえばおわかりいただけるでしょうか。そうした大人の立場からすると、迷っているお子様を見てもどかしく感じられることもあるでしょう。


もどかしくなってくると、「次は右!その次は左へ行きなさい!」という指示を出したいと感じることもあるのではないでしょうか。ところがその指示を受け続けてしまうと、お子様は「指示を受けなければ動けない」というタイプになってしまうことがあります。「迷路の入り口」に立った瞬間、つまり「難しいと感じた瞬間」に立ち止まってしまうのです。そして、誰かに指示してもらう(教えてもらう)ことで、その問題を「解決」しようと考えてしまう可能性もあります。誰も頼れないという場面では、安易に解答・解説を見て、「わかったつもり」になるということにもなりかねません。しかし、このスタイルの学習では、大きな成績向上は見込めません。


「迷路の中で迷っている」ときは、「いろいろな方法を考えて試す」という試行錯誤を繰り返している状態です。そしてそういう瞬間にお子様は成長していくのです。「さっきはこの道を選んで失敗だったから、今度はこの道を選ぼう」という経験の積み重ねが、成長につながり、学力向上につながっていくのです。「失敗は成功の母」という言葉がありますが、真剣に取り組んだ結果の失敗は心の中に残るので、次からは同じ失敗はしないようになるという意味の言葉だと私はとらえています。


では「迷路の入り口で立ち止まらずに、自分から一歩踏み出す」ためにはどうすればよいのでしょうか。小学生にとって、難しい問題に直面したときに「自分から一歩を踏み出す」という経験をする機会はあまりないのではないでしょうか。小学校ではそこまで難しい問題にあたることはあまりないでしょう。塾の宿題でも「できる問題」はスラスラと進んでも、ちょっと難しくなってしまうと、前述したように「立ち止まって」しまうことが多いはずです。そんな小学生にとって一番必要なのは、「誰の助けも借りられない」状況の中で、真剣に問題に立ち向かうという瞬間です。


小学生が一番真剣に問題に取り組むのは「テスト」を受けているときです。私の感覚で言えば、授業中に解いているときは70%程度、家庭学習では50%程度、そしてテストのときは90%~100%、それくらいの真剣さと集中度合いで問題に向かっている印象です。ただ、テストを受けた経験が増えてくればくるほど、真剣に考えた経験を積むことになり、家庭学習での真剣さや集中度合いも上がっていくと感じています。


テストを受けているときは、どんな難しい問題でも「もう無理だとあきらめる」か「難しそうだけど考えてみよう、と自分から一歩踏み出す」しか方法はありません。小学生にとって、やはりテストでは「良い点」を取りたいものですから、「一歩踏み出す」という選択をしてくれるはずです。

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