四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『やりたいこと、やるべきこと ~セルフコントロール力~』

2023.05.24

たとえ「やりたいこと」があったとしても、「やるべきこと」があればそれを先に終わらせる。こういった物事の「優先順位」をきちんとつけて、それを守ろうとするのは大人の感覚でしょう。なぜそれができるのかといえば、そうしなければどうなるのかが大人にはわかっているからなのだと思います。後で苦労するよりは、先にやった方が心情的に楽になるから、ということもあるかもしれません。一方で、子どもの場合は、宿題があっても友だちが誘いに来れば遊びに出掛けますし、見たいテレビ番組が始まれば宿題の手が止まるなど、やりたいことを優先してしまうのが普通です。


友達と約束をしてきて遊びに行こうとしている子どもに、「宿題を終えてからにしなさい」と声をかけ、机に座らせたらどうなるでしょうか。たぶん多くの皆様が想像される通り、頭は動かず、手も動かず……という状態になってしまうのではないでしょうか。小学生の場合、「やりたいこと」と「やるべきこと」をきちんと頭の中で整理し、「やりたいこと」を頭の片隅に追いやって、「やるべきこと」に集中するというのはなかなか難しいことなのです。


読書が好きなお子様がいました。本を読んでいるときに、家庭学習の時間になったのでお母様が声をかけたところ、「もうちょっと、もうちょっとだけ読ませて……」ということが何度かあったそうで、相談を受けました。学習計画表に沿ってしっかりと学習を進めさせたい場合には、「学習のスタート時間を守らせる」ということはとても大切です。その視点で考えたときには、このケースは「ダメ!すぐに始めなさい!」というのがお母様の正しい対応となります。


しかし、その後の学習効果を優先する場合は、少々大目に見てもよいケースだとも考えられます。「いまどこまで読んでいるの?きりのよいところになったら勉強するのよ」という答えがあってもよいわけです。本の続きが気になっていては、宿題に集中できないのですから。もちろん、本当に読書に引き込まれているというのが前提です。場合によっては「勉強にとりかかりたくない」から、「もうちょっと」と言っている場合もあるかもしれません(実際にはその場合が多いかもしれません)。そのときには「きちんと計画表に書いてあるでしょ!」と厳しめに声をかけていただければよいと思います。


小5以上からは、「やりたいこと」を優先させるよりも「やらなければならないこと」を先に片づけるという方向に少しずつ向かわせていくのがよいと思います。ある程度の「計画性」が身に付いてくれば、「いまやらなければ後で困る」という意識が芽生え始めるはずです。そのタイミングで「自制」することを自覚するようになれば、(もしくはそういう意識を持たせるようにすることで)成長の段階を一段階上がることになりますし、私はそこからが本格的な「中学受験へ向けた道のり」のスタートだとも考えています。


「自制心」については、「セルフコントロール力」と言われることがあります。子どもの「セルフコントロール力」を調べる実験についての記事を読んだことがあります。


1970年代の話ですので、かなり昔のことになりますが、アメリカのスタンドフォード大学で4歳から5歳の子どもを対象として行われた心理学実験です。マシュマロなどのお菓子(子どもが好きなもの)が用意された部屋に子どもを通し、「今から15分間、これを食べずに我慢ができればもう一つあげるけれど、食べてしまったら、もう一つはあげない」ということを伝えて、部屋の中に一人で残しておくという比較的単純な実験です。その結果、食べずに我慢できたのは全体の三分の一程度の子どもだったという結果が出ているようです。たしかに4歳くらいであれば、我慢できずに食べてしまう子どもの方が多いように、私も思います。この実験はルールの説明の仕方にポイントがあるのではないでしょうか。


もし「ここのお菓子は絶対に食べたらだめ」と言われれば、それでも食べてしまう生徒は非常に少ないという結果になると思うのです。4歳~5歳の子どもであれば「大人の言いつけを守る」というのは大切なことですから。「食べたら叱られる」と考えれば、そうやすやすと手を出すことはないはずです。しかし、ここでは「食べなかったらもう一つあげる」「食べたらもう一つはあげない」という選択が子どもに委ねられたわけです。そのどちらを選択するかが、子どもの「セルフコントロール力」を試す部分になっているのだと思います。お子様と(我々であれば生徒と)接するときのヒントが、そこにはあるように思っています。


さて、この実験には後日談があり、その後の追跡調査では、食べずに我慢した子どものグループは、学校成績などで「優秀」と評価されているということも発表されています(この結果に関しては反対意見もあるようですし、私も個人的には……)。児童心理学では比較的有名な実験ですので、ご興味のある方はお調べください。「マシュマロテスト」と検索していただければ……。

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