『見るチカラを養う、聞くチカラを伸ばす ~夏の学習の方向性を考える~』
2023.06.23
中学受験のための学習を進めていくときに、必要になる「チカラ」はいくつもあります。今回はそれらの「チカラ」について書かせていただきます。
以前、「NN志望校別コース」の「立体図形」の回で生徒たちに聞いてみたことがあります。「立体図形」は得意・不得意が分かれやすい単元です。難関中を目指している生徒たちなのですが、それでも「あまり得意ではない」という生徒がクラスの三分の一以上いました。
算数における「見るチカラ」といったときに、狭い範囲では「図形を見るチカラ」ということになります。まずは、この点についてお話しさせていただきます。「立体図形」の図の描き方にはいくつかの種類がありますが、中学受験における多くの問題では「見取り図」が使われています。「投影図」も使われることがありますが、頻度はそれほど高くはありません。この「見取り図」を見たときに、頭の中で「立体」のイメージできるかどうかが、この単元を得意にするか、不得意にするかの大きなポイントになります。「見取り図」にしても「投影図」にしても、実際には「立体」である図形を、それぞれの「ルール」に従って「平面」に描き表しているものですので、「ルール」を理解すればよいということになるのでが、それだけでは実際に「見えてくる」ようにはなりません。必要なのは「立体を見る感覚」です。この感覚は小学校低学年の時点から、トレーニングを重ねていくことが大切です。比較的早いタイミングで「立体感覚」が身に付いてくるお子様もいますし、なかなかうまくつかめないお子様もいます。数をこなすことでトレーニングしていくことが必要な部分となります。特に小学校低学年においては、立体図形を「見る」だけではなく、「自分で描いてみる」という練習も効果があります。ご家庭で「立方体」を描かせてみるのも面白いトレーニングになるはずです。
先日の「全国統一小学生テスト」でも、各学年で「立体図形」に関する問題が出題されました。お子様がどのように解いたのかといった点などもご確認いただき、この先のトレーニングをお考えいただくのもよいと思います。
学力を伸ばしていくためには、「聞きとるチカラ」もとても大切になります。よくお話しさせていただくのが「授業を受ける力」を伸ばすことが、学力向上につながるというポイントなのですが、そこでも「聞きとるチカラ」が大切です。授業で先生が話した内容の中で、重要な点をしっかりと聞きとって把握するというイメージです。もちろん先生は「重要なポイント」を強調して話をするのですが、小学生の場合(実は中学生もですが)必ずしもそこが頭に残っているわけでもありません。ある程度のトレーニングをしていけば、どこが大切かを「聞き分け」て、そこをしっかりと覚えておくことができるようになるのですが、経験やトレーニングが足りていないと、なかなかうまくいかない場合があります。中学校や高校に進学すれば、授業内容はより高度になりますので、小学生の間に「聞きとるチカラ」を鍛えておくことが必要になります。学校の授業よりもスピードが速く、密度も高い進学塾での授業の中で身に付けるべきことは「学習内容」だけではなく、この「学習の仕方」「授業の受け方」もあるのです。それらが次のステージでの学ぶにつながると思っています。
中学受験カリキュラムを進めていくときには、もちろん「覚えるチカラ」も大切です。ただ、算数の入試問題は、公式を覚えてそれを適用するだけで解ける問題ばかりではありません。理科や社会も、必要語句の暗記だけではなく、本質的な理解が問われる問題が多くなってきているのは、よく言われていることですので、ご存知の方も多いでしょう。
「全国統一小学生テスト」や「公開組分けテスト」の結果などから、お子様に必要な「チカラ」を見つけて、そこを伸ばしていくように、ご家庭でもお考えください。そして、そのために一番大切な時期は、ここからやってくる「夏休み」になるはずです。
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