『表現する力』
2017.12.22
先日(12月10日)、小学校4年生を対象とした「記述力模試」が早稲田アカデミー主催で行われました。最難関中学の入試問題では、記述型の設問が多く出題されることもあり、今年度から新しくスタートした模擬試験です。2020年度から実施が予定されている「大学入試センター試験」に代わる「大学入学共通テスト」でも記述式問題が出題されると発表されています。2020年度からは国語と数学のみということになっていますが、2024年度(現在の小学校5年生が高校3年生で大学受験を迎える年度)からは理科・社会においても、記述型出題が検討されているようです。
なぜ、記述型の出題が増えているのでしょうか。
ひとつには、いまの子どもたちが活躍する未来において「協働力」が必要となるからだといわれています。「ひとりの能力の高い人間が成果を生み出すのではなく、能力の高い個人が集まり、チームとして大きな成果を作り出す」という未来が想像されているのです。現代もすでにそういった時代になっている、と私は思います。「チームとして、協力しながら働く」ためには、必ずコミュニケーションが必要です。意見が対立した際も、自分の考えをしっかりと主張しつつ、相手の主張も尊重しながら仕事を進めることが必要不可欠でしょう。そこで自分の意見をきちんと伝えることができる「表現力」が大切になるわけです。
そしてもうひとつ、記述型問題で試されるのは「本質的な学力」「考える力」だと、私は考えています。たとえば「何を知っているか(知識)」を試すのであれば、選択式問題で十分でしょう。しかし、「どのように考えたのか」を試すには、選択式問題では不十分です。そういった観点から、より深く考える力が試される問題が増えてきているともいえるわけです。
全国の公立中高一貫校では、「適性検査」という入試が行われています。算数・国語・理科・社会という科目の試験ではなく、科目融合型の記述を中心とした問題が出題されています。表やグラフなどを読み取り、気がついた点から考察できることを記述させる問題や、理科の実験結果から分かることを書かせる問題などが多く出題されています。また、ほとんどの学校で国語的な作文も課されます。非常に特徴的な出題をする学校もあり、新傾向の入試といえるかもしれません。特に作文において特徴的な出題をしているのが、東京都立の桜修館中等教育学校です。学校のホームページに過去問題が掲載されていますので、ご興味のある方はご覧になってみてください。今年の「適性検査Ⅰ」は大人でもかなり難しく感じられる問題になっています。
さて、「表現力・記述力」を伸ばすためにはなにが必要なのでしょうか。私は「どう書くか」ではなく、「なにを書くか」が一番大切だと、生徒たちには指導をしています。小6受験直前期になれば、その学校の出題傾向に合わせて、「どのように書くか」という学習も必要になります。たとえば「制限字数が500字以上600字以内であれば三段落構成にして書く」「修飾語はなるべく被修飾語のそばに置く」、というような記述のテクニック的なポイントです。ただ、どんなに上手く書けていたとしても、その内容が薄ければ得点にはなりません。先ほども触れたように、試されているのが「考える力」なのだとすれば、「どのように考えたか」「どれだけ深く、幅広く考えられたか」の方が大切になるはずです。ご家庭で記述問題をご覧になる場合も、そんな視点でご指導いただければと思います。
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