『感動を言葉で表す ~詩の学習方法~』
2017.12.01
今回は国語の話を。
早稲田アカデミーの小3・小4カリキュラムでは、12月に「詩」を扱うことになっています。中学入試において「詩」を出題する学校は多くありません。ただ「作者の感動を理解する」「言葉のニュアンスをつかむ」という読解手法は、詩の学習だけにとどまるものではありません。国語力そのものをレベルアップしていく、そんな学習単元だと私は考えています。そこで今回は、私がどのように「詩」を教えているのかを簡単にご紹介させていただきます。
詩の単元では、いくつか教えなければならないことがあります。「比ゆ表現」「体言止め」などの表現技法や、「定型詩」「自由詩」「散文詩」といった形式は、もちろん知識として定着させなければなりません。しかし、詩の導入段階ではあまりそちらに重点を置くことはしません。まずは、詩とはどういうものなのか、そこに使われている「言葉」がどのようなものであるかを意識させるところから授業を進めるようにしています。
① 詩を書くのはどんなとき?
詩の授業では、「とってもきれいな風景を見たとき、君たちはどうするかな?」という質問から始めます。すると「写真を撮る」「絵に描く」といったような答えが返ってきます。最近はデジカメや携帯電話(スマートフォン)のカメラなどもありますから、小学生にとっても「写真を撮る」というのは一般的なことのようです。「じゃあ、もしカメラも紙も鉛筆もなかったらどうする?」という次の質問です。「覚えておく」と答えてくれる生徒もいます。「とっても美味しい料理を食べて、その味を覚えておきたいときはどうする?」、この質問にはなかなか手が挙がりません。
「きれいだなと思ったり、美味しいなと思ったり、うれしいとき、楽しいとき、そんなことを記憶に残しておきたいと思ったときに、言葉を使う方法がある。それが『詩』なんだよ」と教えます。作者の心が大きく動き(感動)、それを残しておきたい、誰かに伝えたいと思ったときに、詩が生まれるということを伝えたいわけです。それが理解できれば、必然的に「作者の感動」はなにか、という詩の読解の本質につながっていきます。
② 詩は短いから、作者が伝えたいことも少ないのかな?
詩は「作者の感動」であることを理解したら、そこに使われている言葉について考えさせます。散文と比較をすると、韻文(詩)は使われている言葉は少なく、文自体も短いです。ただ、伝えたいものが作者の感動ですから、それはとても大きなもののはずです。とするならば、詩に使われている一つひとつの言葉は、普通の文章(散文)以上に大きな意味を持つことになります。その点を理解してもらうようにしています。「ひとつの言葉でたくさんのことを伝えたい、だからこそ、詩を書くときにはいろいろな工夫をするんだよ」と表現技法の話につなげていきます。
「空にマシュマロがぽっかり浮かんでいる」という比ゆ表現を考えてみましょう。これをわかりやすく言い換えなさいという問題を出すと、多くの生徒が「空に雲がぽっかり浮かんでいる」というところで終わってしまいます。ただ、それだけでは「マシュマロ」という比ゆ表現をきちんと説明していることにはなりません。「色は」「形は」「どんな様子」という問いかけをしていくと、「マシュマロ」という言葉の持つイメージが膨らんでいきます。ひとつの言葉にそれだけのイメージをこめて表現しているのだということが理解できるはずです。
逆に、説明的文章では、「言葉のイメージ」を膨らませるという考え方は必要ではありません(時には必要になる場合もありますが……)。「言葉を拡大解釈せずにとらえる」ことの方が重要です。高学年の場合は、その点も含めて(文章別の読解方法の違いも含めて)指導をするようにしていきます。ご家庭で指導されるときの参考になさってください。
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