『「教える」ということ』
2019.03.06
今回は、ご家庭でお子様の宿題などをご覧になるときのポイントについて書かせていただきます。最初に、早稲田アカデミーのテキストに載っている、小学2年生の算数の問題をご紹介します。
1つに3人が座れる長いすが6脚あります。
(1)あつし君の班には15人の生徒がいます。全員が座ったとして、あと何人座れますか。
(2)あつし君のクラスには全部で32人の生徒がいます。何人が座れなくなりますか。
さて、この問題について、お子様から質問されたとします。皆様はどのように考えて、お子様に教えますか?
まず皆様は、ご自身で問題を解いてみることでしょう。そして解き方を理解して、その方法をお子様にお伝えになるはずです。しかし、ここでもうひとつ考えていただきたいことがあるのです。それは、お子様がどの部分でわからなくなっているのかということです。言い換えれば、お子様がどのように考えを進め、どの点でつまずいているのかという「お子様の思考過程」です。
例に出した問題で考えてみます。これは「かけ算」の単元で出されている問題ですから、大人が普通に考えれば簡単に解けてしまいます。
(1)3×6-15=3 答え(3人)
(2)32-3×6=14 答え(14人)
となります。さて、それではお子様はどの部分でつまずいてしまうのでしょうか。
まずひとつ考えられるのが「全体を考える」ことができていない、という点です。式でいえば「3×6」の部分になるのですが、ここを最初に考えられていないケースがあります。この問題が学校の教科書に載っているとしたら、(1)の前に「長いすには全部で何人座れるでしょう」という問題があるはずです。そこで出てきた「18人」という数字をもとにして次の小問に進むわけです。
「全体で18人座れる」ということまでは理解できていても、「どちらからどちらを引けばよいのか」がはっきりわからない、というケースも考えられます。小学校の算数では「引き算は大きい数から小さい数を引く」というのが大原則になります(負の数の概念を学んでいないから当然のことなのですが……)。ところが、その結果、「引く数」と「引かれる数」があいまいになってしまって、その引き算の答えが何を意味しているのかがわからなくなってしまうことが多々あります。
少し細かく算数の問題について触れてしまいましたが、おわかりいただけたでしょうか。「教える」ということについて、私が研修などで講師によく伝えているのは、「自分自身が問題を理解する」ということだけでなく、「『教わる側=生徒』をきちんと理解する」ことが必要だ、という点です。単に問題の中身や解き方を「理解」するだけではなく、それ以上にお子様の状況を「理解」するよう意識することが大切なことだと、私は考えています。
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