四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『中学受験国語の学習法③』

2021.06.25

中学受験へ向けた「国語学習」についての第3回目の記事となります。


先日(6月22日)、「大学入学共通テスト」に関して、文部科学省の有識者会議が「記述問題導入と英語民間試験活用について、現時点での課題克服が困難」という提言案を示しました。本来であれば、今年の2月から導入されるはずだったものですが、いったん「2025年まで見送り」となり、今回は「2025年以降も難しい」という結論になったようです。


もともと学校教育法において定められている「学力の3要素」に沿って進められてきている「高大接続改革」ですが、50万人以上が受験する「大学入学共通テスト」に関しては、大きな制約もあるのだと思います。ただ、今回の提言の中でも「個々の大学が実施する入学試験においては、すでに導入も始まっている。今後も積極的に行われることが望ましい」という表現が入っているようです。そのため「大学入学共通テスト」の出題形式などには関わらず、これからの学習の方向性は大きく変わらないと、私は考えております。


「学力の3要素」をわかりやすくご紹介すると、以下の3つになります。
①基礎・基本的な知識・技能
②知識・技能を活用して課題を解するために必要な思考力・判断力・表現力等
③学習意欲


今回は「記述式問題」につながる、「記述力」「表現力」について書かせていただきます。大学入試だけではなく、中学入試においても、記述型の設問が多くなってきており、さらには「自分の考え」を書かせるタイプの問題も増えてきています。公立中高一貫校の適性検査で出題される「作文問題」はその典型ですが、私立中の入試でも「本文をまとめて、それに対する意見を書く」「本文内容と同じような自分の体験を書く」などの問題が多く出題されています。中には「絵を見て感じたこと、考えたことを書く」というような問題を出題している学校もあります。


さて、記述力・表現力を高めていくためには、何が必要になるのでしょうか。もちろん「書くこと」そのものも必要ではあるのですが、それ以前に「何を書くのか」ということの方が大切だと、私は考えています。たとえば国語の記述型設問では、書くことが大切だからといって、きちんと文章を読まずに(理解せずに)、解答用紙のマス目を埋め始めても合格できるレベルの答案にはならないでしょう。まずは出題文の文意をきちんと把握するところからスタートするように、私は指導をしています。


次に大切なのは、「問われていることが何か」をきちんとつかんで、そこから解答をつくるということです。問われていることにストレートに答えていなければ、どんなに内容がよかったとしても、入試では減点になってしまいます。「登場人物の気持ち」を問われているのであれば、きちんと気持ちを表す言葉を書き込む、「なぜ」と聞かれているのであれば「理由」をきちんと書き込む、といったようなポイントです。その一番重要なポイントを核にして、そこに必要な言葉を付け加えて答案を完成させるというのは、記述解法のテクニックのひとつでもあります(余談ですが、その逆の方法もテクニックとしては存在します。制限字数にこだわらずどんどん書いていって、そこから不要な語句をそぎ落として完成させるという方法です)。


そして、それらの前提となるのが「書くことをいやがらない」という学習姿勢です。記述問題を見ると、それだけで「難しそう」と感じてしまって、手が(思考が)止まってしまうタイプの生徒がいます。記述力を向上させるためには、やはりある程度の慣れが必要になってきますし、そこには「自分で書く」というトレーニングが大切になるのです。「自分で書かない」ということになってしまうと、そのあとで解答を見ても、記述力そのものは身に付きません。記述の模範解答というのは「完璧な正解」になっていますので、当然小学生にはそのレベルの解答をつくることはできませんから、模範解答を読んだとしても、自分で書くための「参考」にはほとんどならないのです。


一度「書くこと」に対しての苦手意識を持ってしまうと、なかなか払拭するのは難しいものです。まずは「書かない・書けない」原因を探ることからスタートしてみるのがよいでしょう。


その原因として考えられることのひとつとして、「なんとなくわかってはいるのだけれど、正解になる自信がないから」というものがあります。算数にしても、国語の選択肢問題にしても、自分で出した答えが「正解であるという確信」を持てることがあります。ところが記述式問題の場合、その感覚はなかなか持てないはずです。また上記のように、記述の模範解答は(小学生にとっては)非常に高いレベルのものなので、「それが正解。そこまでの解答は書けない……」というように思い込んでしまうこともあるでしょう。そういった意識から、結局記述欄を空欄にして残してしまうという生徒が多くいます。このケースの場合は、まずは書いたことそのものを評価してあげると効果があります。私が小3~小4の授業で記述問題を扱うときには、10点満点で評価をするという方法を使います。ひとつの記述解答に対して、何人かの生徒に発表させて、一人ひとり「10点満点中の○点!」と評価をつけるわけです。学年やクラスによっても異なりますが、「なんでもいいから制限字数の半分以上書けていたら、3点以上!」というようなスタイルで進めていくわけです。これを続けていくと、宿題の記述欄を空欄にしてくる生徒が減ってくるのです。参考にしていただければと思います。

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