『感動の図式』
2022.07.22
子どもが精神的に成長するためのキーワードとして「自覚・刺激・環境」があげられることがあります。そして、その「刺激」は「感動」と言い換えることもできると思っています。「夏の成長」の背景には、「夏休みの感動体験」があるはずです。いよいよ始まった夏休み、子どもたちにはたくさんの感動を経験してもらいたいものです。
ところで「感動」とはなんでしょう。国語の授業で、詩や短歌・俳句を教えるときに、「感動の中心をとらえなさい」という教え方をすることがあります。きれいな風景を見て感動したときに写真を撮るのと同じように、大きな感動を体験し、そのことを心に残しておきたい、誰かに伝えたいと考えたときに、言葉を使って表現するのが、詩であり、短歌・俳句だと指導するわけです。そして、作者の感動の中心となっているものが何かを正確にとらえることができれば、きちんと読み取れたということになるわけです。
少し話がずれてしまいましたが、感動というのは、大きな心の動きと考えることができるわけです。きれいな景色を見れば「きれいだな」と思うわけですが、それがある一定以上の「大きさ」になれば、「感動」になります。「おいしい」「楽しい」「うれしい」という気持ちも、それが大きくなれば「感動」につながります。一方で、プラスの心情だけではなくマイナスの心情も、大きな意味では「感動」といえるのです。斎藤茂吉の「赤光」という歌集に収録されている「死にたまふ母」というシリーズの短歌は、よく中学入試のテキストにも取り上げられますが、母親の死に面した「大きな悲しみ」が感動の中心となっているわけです。
さて、「感動」という心的状態にいたるためには、その前提や背景があると私は考えています。同じ景色を見ても、感動という状態までいくこともあれば、そこまでのレベルにはいかないこともあるでしょう。単に美しい景色を目の前にするだけではなく、言ってみれば「心の準備」のようなものが必要になるのではないでしょうか。旅行に行ったときに見た美しい光景であれば、普段とは違う環境であるという一種の「非日常感」、さらには家族とその美しさを共有できた喜び、そういったものが相まって大きな心の動きになっていくのでしょう。
小学生は学習や授業の中においても「感動」できるはずです。テスト中にとても難しいと感じていた問題があったとします。心の中で「こんなのどうやって解くんだ!?」とつぶやきながら悩んでいるような問題の解説を聞いたとき、一気に目の前が開けるような思いになることがあるはずです。言葉にしてしまえば、「すごい!」「なるほど!」「わかった!」というような表現になるのでしょうが、それはまさしく「感動」ということができるはずです。先生の解説を聞いて「ふーん」と思うか、「感動」するか、はどれだけその問題に真剣に取り組んだかで決まるように思うのです。難しい問題に直面したときに、「なんだこの問題は!?見たことないぞ!」「でも絶対に解いてやる!」、そんな心的状態が一気に解決したときに「感動」という心的状態につながるように思うのです。そしてその感動はお子様を大きく成長させるのです。
充実した夏にするための「夏の感動体験」を、ご家庭でもお考えください。
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