『小3・小4学習の方向性』
2024.01.12
早稲田アカデミー各校舎では1月の授業が行われています。小学校では二期制になっているところも多いですが、私の中ではやはり学校の夏休み前は「一学期」、冬休み前までは「二学期」、冬休み以降は「三学期」という感覚が捨てきれないでいます。その視点でいえば、いまは「三学期」なのですが、ご存じの通り、進学塾の「三学期」は短いです。2月からは新年度になりますので、1月の1カ月だけが「三学期」ということになるわけです。短いですが、非常に大切な期間です。現学年のまとめを行い、次年度に向けた準備を進めていく時期となるわけですので……。
今回は、現学年の一年間の学習内容を振り返っていただくという意味を込めて、小3・小4という「小学校中学年」における学習の重要性について書かせていただきます。
早稲田アカデミーの授業で使用しているテキストは、四谷大塚の「予習シリーズ」という教材になります。この「予習シリーズ」は「小4(上巻・下巻)」「小5(上巻・下巻)」「小6(上巻・下巻)」の全6冊から構成されています。学年ごとの区切りはされていますが、原則として「連続性」をもったカリキュラムになっています。たとえば、算数の「割合(1)」や「速さ(1)」は「小4(下巻)」に登場し、「割合(2)」「速さ(2)」は「小5(上巻)」に登場するというような形になっているわけです。
この全6冊のテキストに、「中学入試に出題されるほとんどが詰まっている」と言っても過言ではありません。言い方を変えれば、「この6冊の内容がすべて理解でき、自分の力でアウトプットできれば、中学入試において(ほとんどの学校で)合格点をとることができる」ということにもなります。
このように申し上げると、「小4からのスタートで中学入試は間に合う」とお考えになる方も多くいらっしゃるでしょう。ただ、ちょっとお待ちいただきたいのです。この6冊のテキストに書かれている内容は、学校の教科書と比較をすると非常に密度が高く、レベルも高いものです。普通の小学生であれば、読んだだけで理解するのは至難の業ですし、さらにはその内容を自分で使いこなせるようになるのは、非常にハードルの高いことだとご理解ください。
「小4からのレベルの高い内容」を身に付けるために大切なのが、小3での学習となります。私は保護者会などでは、小3学習のイメージを「頭の中のタンスに引き出しをつくる」というように表現することがあります。小学生段階で「頭脳という器」はとても大きいものです。しかし、その頭脳もトレーニングをしなければ、「インプット」も「アウトプット」もなかなかスムーズにはできません。そのトレーニングのイメージが「引き出しをつくる」と表現させていただいています。
小3から小4では、新しい学習内容がたくさん出てきます。算数では、小3で「わり算」「小数」「分数」「角度」、小4で「倍数・約数」「割合」「速さ」「面積」などを初めて扱うことになります。こういった一つひとつの学習内容について、しっかりとした「考え方の引き出し」をつくってあげるのが、その先につなげるためにはとても大切なことになるのだとお考えください。「引き出し」さえできていれば、そこに知識や考え方を入れていくのは後からでもかまわないのです。きちんと「引き出し」ができていれば、そこから取り出す「アウトプット」も比較的簡単になるはずです。
小3・小4学習について考えるときに思い出すことがあります。 2019年にノーベル化学賞を受賞された吉野彰先生のインタビューを、当時テレビで見ていました。そのときに印象に残ったのが「化学の道に進みたいと思ったのは、小学3年生か4年生のときに、学校の先生から勧められた『ロウソクの科学』という本を読んだときだった」というお話でした。話題にあがった『ロウソクの科学』については、書店の売り上げランキングの上位にきたというニュースも見た覚えがあります。
小学生のときにどのような刺激を与えるのか、どのようなことを考えるきっかけをつくるのか、それはその先の将来や人生にとって、本当に大切なことなのだと改めて考えさせられた瞬間でした。日々、小学生と触れ合っている我々講師にとっては、その点をしっかりと考えて、彼らの将来のために接していくことが必要なのだと強く思っています。
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