四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『2021年2月3日』

2021.02.03

首都圏で中学入試が行われています。すでに終盤に差しかかっており、進学先を決めた生徒たちも多く出始めています。明日以降の入試に挑戦する生徒もいますし、発表を待っている生徒もいます。全員が、それぞれの進学先を決めて、笑顔の春を迎えるまで、私も最後まで応援していきたいと考えています。


新型コロナウイルス感染症の影響でどのような入試になるのか、という点が話題となった今年の中学入試。各中学校での感染対策は徹底されていたようです。往復の交通機関で「密状態」になる懸念から、校庭を駐車場として開放した学校がニュースで取り上げられていました。また、一人ひとりの机上にアクリル板のパーテーションが設置されている映像も見ました。入試会場に入っていく受験生も保護者の方も、さらには学校関係者も、みんなマスク姿の入試となりました。


我々にとっては、「受験会場での激励・応援」が自粛となったのがとても大きな変更点でした。早稲田アカデミーで講師を始めてから、毎年「2月1日」から「2月3日」は入試会場に応援に行っていたのですが、それがなくなったのは、物足りないような「違和感」があったというのが正直なところです。2月1日の朝は、例年入試会場に行っていたのと同じ時間に起きて、コートを着てベランダに出てみました。冷たい風にあたって、少し気が引き締まる思いでした。受験生たちの健闘を祈りました。


ここ数年の流れではあったのですが、今年の新型コロナウイルスの影響でさらに進んだのが、インターネットを利用した出願、合格発表の仕組みです。一昔前には「有名校の出願日には保護者の列ができる」という話もあったのですが、それがほぼすべてなくなりました。また、合格発表時には「学校の掲示板の前で喜び合う親子の姿」なども、よくテレビで報道されていましたが、それも少なくなってきています。「緊急事態宣言」が発出されていることもあり、極力、人との接触や「密」になる環境を避けるという学校側の配慮だと思います。
入試そのものに関しては、いくつかの学校で「面接試験」が廃止されたのが大きな変更点でしょうか。また「濃厚接触者」と認定された受験生などへの対応は、学校によってさまざまだったようです。


一方で、入試問題への影響は大きくなかったように、個人的には感じています。新型コロナウイルスの影響があっても、それぞれの学校が「求める力」は変わるものではありません。特別な状況下の入試だからといって、入試傾向を変える意味はないのだと、私も思います。さらに、この一年間ウイルスという「見えない敵」と闘いながら、入試に向けた学習を進めてきた受験生たちのためにも、「入試傾向は変えない」という選択を多くの学校がしたのではないかとさえ思えてきています。


この段階ですべての中学校の問題を見られているわけではないのですが、少しだけトピックスとしてご紹介いたします。過去に世界や日本で流行した「感染症」をテーマにした問題を出題したのが、慶應義塾普通部の社会です。感染症の名前そのものを問う問題ではなく、それらが流行した時期の出来事を答えさせる歴史の問題として出題されていました。明大明治でも日本の歴史における「感染症の流行」がテーマとなっている文章が出題されており、「アマビエ」の図も登場していました。


頌栄女子学院の社会では、「境目」という言葉をテーマにして、3つの大問それぞれに文章が用意されていました。大問1では「緊急事態宣言」下の「都道府県の県境をまたいだ移動はお控えください」という言葉を取り上げて「県境」についての問題など、さまざまな社会的知識・一般常識的知識が問われていました。大問2では「日本の歴史から見た『境目』について考えてみましょう」という文章をもとにして歴史的な問題が出題されました。面白かったのは大問3です。「国際結婚をした3人の日本人女性」を取り上げた文章で国際関係に関する問題が出題されていました。紹介されていたのが「クーデンホーフ光子」「オノ・ヨーコ」「デヴィ夫人」の3人で、「ビートルズ」の名前を答えさせる問題もあり、小6生が答えられたのかどうかは個人的に気になるところです。テレビでタレントとして見かける「デヴィ夫人」が純日本人で、スカルノ大統領の夫人であったということに驚いた受験生もいたかもしれません。


最近、国語の問題の中で「文学史」を問う問題はあまり見かけなくなってきているのですが、社会の小設問の中で出題されていることがあります。上記で紹介した頌栄女子学院(社会)では「雪国」の作者が、女子学院(社会)では「雨ニモ負ケズ」の作者が、それぞれ問われていました。国語的な社会の出題という点では、聖光学院の社会で「うさぎ・箸・かに」を数えるときに使われる助数詞「羽・膳・杯」を答えさせるものもありました。


国語の出典では寺地はるなさんの「水を縫う」という作品が、複数の学校で出題されていました。千葉県の市川学園と東邦大東邦で出されていて、両校は併願している生徒も多いので、「昨日の学校と同じ作品だ」と驚いた生徒もいたことでしょう。その他にも海城・中央大横浜で出題されていました。


各中学校の入試問題分析は、これから早稲田アカデミー教務本部で進めていくことになりますので、今回は私がさっと見た中で面白そうな問題をご紹介させていただくだけにとどめます。


例年、地域ごとの会場をお借りして実施している「中学入試報告会」は、今年度はオンライン映像配信の形でお届けいたします。詳しくはその場に譲りたいと思います。よろしければ、ぜひお申し込みください。

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