『桜、咲く』
2021.03.17
3月14日(日)に東京では「開花宣言」が出されました。昨年と同日で、「観測史上最速タイ」というニュースを見ました。昨年の今頃は新型コロナウイルス感染症が急激に拡大し始めていた時期でしたから、「桜の開花」というニュースどころではなかったような記憶があります。全国的に「クラスター」という言葉が使われ始めたのが、昨年のちょうどこれくらいの時期だったと思いますし、「夏のオリンピック」についても開催可否が論じられ始めていたのも覚えています。そして4月の「緊急事態宣言(第1回目)」の発出、そこからの一年間、本当に大変な年となりました。
今も感染状況は続いています。「変異株の流行」「第4波の懸念」といった話題も取り上げられていますし、延期されていた「オリンピック」の開催に関しても話題になっています。まだまだ予断を許さない状況ではありますが、桜のつぼみが色づき始めているのを見かけると、やはり時が移ろうのを感じます。必ずや近い時期に、この状況が改善するときがくると思いますし、そのときを心待ちにしています。
中学入試では、身近なことに関して興味を持っているかどうか、ということを試すような問題が出題されることがあります。今年の広尾学園の理科では、「紙、段ボール、和紙、Tシャツ、ビニール袋、ペットボトル、アルミホイル」という材料の中から3つを選び「性能がよく快適に使用できるマスク」を考えさせる問題が出題されました。完成図も書かせるという面白いタイプの問題です。
「桜」も日本人にとって身近な植物です。以前、「桜前線」についての出題を見たことがあるのですが、どの学校の何年度だったか忘れてしまい、今回探してみたのですが見つかりませんでした。「桜は卒業式で咲く花」「入学式で桜が満開だった」という、地域による開花時期の違いなどにも触れられていて面白い問題だった覚えがあるのですが。もう少し探してみるつもりです。せっかくなので、「桜」についての話題をもう少し……。
桜を題材にした和歌はたくさんあるのですが、一番有名なのは『百人一首』にも収録されている紀友則の 『ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ』 という歌ではないでしょうか。穏やかでのどかな光が差している春の日なのに、なぜ落ち着いた気持ちもなく桜は散っていってしまうのだろうか、というような意味の歌です。小学生にこの歌の鑑賞をさせるのは少し難しいかもしれませんが、『百人一首』を知っているのであれば、こういう意味なんだよと教えてあげることで、興味を抱くようにもなると思います。
さて、この歌で詠まれている桜は、いまの日本人が良く知っているソメイヨシノではないのです。ご存知の方も多いと思いますが、ソメイヨシノは江戸時代に品種改良が行われて作られた品種のひとつです。紀友則が詠んだ桜は花が美しいヤマザクラだと言われているようです。ヤマザクラは花と葉が一緒に出るため、今でいう「葉桜」のような状態で満開を迎えることになります。一方、花はそれほど大きくない品種でも、葉が花より遅れて出る品種もあるそうです。この二種をかけ合わせて、美しい花だけが満開になるように作られた品種がソメイヨシノです。また、ソメイヨシノは接ぎ木や挿し木でしか繁殖できないため、全てのソメイヨシノは江戸時代の1本の木から作られた同じ遺伝子を持っているそうです。そう考えると不思議な気分がしますよね。
さて、もう一つ桜の話題。お子様方に『桜の匂いってどんな匂いだと思う?』と問いかけてみてください。皆様も、そう聞かれるとなんとなく桜の匂いを思い出すのではないでしょうか。もしかしたら「桜餅」の匂いを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。桜餅の匂いはもちろん、桜の花の匂いではなく、桜の葉の匂いです。香りを使った商品の中には多く、桜をテーマにした香りがつけられているものもあるようですが、実は桜の花には香りはないと聞きました。桜の香りと呼ばれている商品は、桜から連想されるイメージでつけられているのだそうです。どんな匂いかを想像させた後で、実際に桜の匂いをかがせて、無臭であることを確かめさせるのもよいかもしれません。
私の実家に、区の保護樹林になっている桜の老木があります。お花見は「自粛」ですが、今週末にでも実家まで見に行ってみようかと考えているところです。
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