『「解き方」ではなく「考え方」を身につける』
2018.01.12
前回の記事でも書かせていただいたのですが、1月はどの学年でも、現学年の「まとめ」を行います。もちろん、学年・科目によっては三学期に新出単元を学習する場合もあるのですが、総じて「まとめ」学習をするイメージをお持ちいただくとよいでしょう。現学年の間に身につけておかなければならないことを確認し、抜けがあればそこを埋めていくのが「まとめ」学習の目的となります。そこで重要になってくるのが、その学年の「なに」を身につけておかなければならないかの理解です。
国語の場合、学年が切り替わるタイミングで、テキストやテストの文章レベルが一段階上がります。旧学年の間に、その学年における読解の基本的なフォームを身につけておくことで、新学年から文章の難度やレベルが上がっても、読み解くことができるようになります。一方で、旧学年中に学んだ漢字や語句などの細かい知識を隅々まで覚えておくことはあまり意味がありません。それらの知識は、学年が上がれば自然に身につくもの(漢字など)もありますし、知識事項などは新学年で再度扱うものも多くあるからです。
一言で言えば、現学年で出てくる「知識」や「解法」を覚えることが必要なのではなく、その学年で必要な「考え方」を身につけることが大切なのです。
私が小学生の授業を行う際に一番大切にしているのは、「考え方を身につけさせる」という点です。生徒たちは「解き方を知りたい」と、ある意味「安易」に質問にくることがあるのですが、「解き方」だけを単純に教えるような対応はしないように心掛けています。まず、「問題を読んでどんな風に考えようとしたの?」と聞き返すところから始めます。自分で考えるように促し、そこから自分で「解き方」に気がつかせるようにするのです。ひとつの問題を解くのにある程度時間が掛かってしまうのですが、その「考え方」を理解できた生徒は、同じような問題を二度と質問にくることはありません。一方で「解き方」だけを教えた場合、同じような問題をまた質問しにくることが多いのです。
例を用いてもう少しわかりやすく説明いたしましょう。
算数の図形問題でたくさんの補助線を引く生徒を見かけることがあります。その生徒は、補助線の引き方(つまり、補助線を引く場合の「考え方」)が身についていないわけです。
三角形などの典型問題の場合、今までの経験からなんとなく「このあたりに補助線を引けば解けるかな」と引いた補助線でも解ける場合があります。しかしこれはその問題で偶然「当たった」だけで、そのほかの問題でも有効とは限りません。
『三角形の線分比が問われているのであれば、面積比を利用するか、相似を使うはずだ』
『この問題では面積は与えられていないので、相似になるはずだ』
『相似をつくるのには平行線が必要になる』
『どこに平行線を引けばいいのだろうか……そうかここだ!』
このような思考過程が「考え方」ということになります。正しい補助線が引ければ、そこから先はスムーズに「処理」ができるはずです。
ところが、先ほど申し上げた「解き方を知りたい」という生徒の場合、「どこに補助線を引けばいいかを教えてほしい」というところからのスタートになります。補助線を引くところを教えることは簡単ですし、それを教えてしまえば答えまで行きつくので、生徒も安心します。しかし、次に同じような問題が出てきたときに、また悩むことになってしまうでしょう。
「考え方」と「解き方」という点に関して、簡単に書かせていただきましたが、指導法・教授法のある意味本質的な部分になりますので、文章で説明するのはなかなかでは難しい部分があります。授業での指導に関しては、早稲田アカデミーの講師にお任せいただくとして、保護者の皆様に知っておいていただきたいのは、正解を出す過程として、まずは「考え方」があり、そこから「解き方」につながっていくのだというところです。「解き方」にだけこだわるのではなく、まずはどのように「考えるのか」というところを重視するように、ご家庭でもお話しいただければと思います。
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