『梅雨の陽性と陰性 ~言葉のイメージ~』
2018.06.13
前回は「梅雨」についての記事でした。「今年の梅雨明けはいつ頃か気になります」ということも書かせていただいたところ、「今年の梅雨は陽性傾向で、晴天と雨が交互に続くようなメリハリのある天気になる、と予報が出ています。陽性の梅雨は期間が比較的短いそうです」と教えていただきました。梅雨には「陽性」と「陰性」と「空梅雨」という分類があるそうです。ただ、正確な気象用語ではないそうで、あくまでも「イメージ」をつかむためのものだということです。ご興味のある方は調べていただくとよいかもしれません。
特に日本語において、「言葉の持つイメージ」をつかむというのは大切なことです。梅雨のタイプの「陽性・陰性」も、その言葉からニュアンスがつかめるように思います。梅雨ですから、いずれにしても雨は降るわけですが、降るときにはザッっと降って、晴れるときにはカラッと晴れるようなタイプが「陽性」、ジメジメとした天気が続き、それほど強くない雨がダラダラと降り続くのが「陰性」……といったイメージが伝わってきます。
国語で「詩・短歌・俳句」を学習するときに、言葉のイメージやニュアンスについて触れることがあります。いろいろな例を出すのですが、たとえば方角を表す言葉。「北」「南」という言葉(漢字)は、単に方位を表す言葉なのですが、それぞれに特有のニュアンスが含まれる場合があります。「北の岬」と「南の砂浜」という二つの言葉を比べてみてもわかるのではないでしょうか。「北の岬」という言葉には、なんとなく冬の寒い時期のイメージがありますし、「南の砂浜」には夏の強い太陽が降り注いでいるイメージがあるはずです。
「絶対0度」と「絶対零度」という二つの「表記」に関して触れたこともあります。この話題ではいつも「どちらの方が冷たく感じられるか」と質問するのですが、皆様はどのようにお感じになられますか。読み方も意味も全く同じではありますが、後者(絶対零度)の方がなんとなく「冷たい」印象を持たれる方が多いのではないでしょうか。「0」と比べると「零」という文字は画数が多く、「鋭角的」な文字です。「鋭さ」「冷たさ」を感じるのはそんなところからだと、考えられるわけです。
女の子の名前についても、同じような話を聞いたことがあります。女性に求められるイメージが変わってきたことに伴って、名前の流行も変わってきたというような話でした。ひと昔前は、女性に求められるイメージが「おしとやか」「つつましやか」というようなものだったので、名前の最後の音が「エ段」「オ段」の音が多かったそうです。現代では「明るさ」「元気のよさ」といったイメージが求められるようになり、「ア段」「イ段」の音で終わる名前が多いという傾向にあるとか。たしかに「ア段=明るさ」「イ段=元気のよさ」というようなイメージがあるように思います。「流行」の影響も大きいとは思いますが、なかなか面白い話だと思って聞いていました。
「言葉のイメージ」も変わることがあります。ここ10年間で大きくイメージが変わった言葉として挙げられるのは、「ゆとり」ではないでしょうか。もともとは「良いイメージ」の言葉だったはずですか、「ゆとり教育」と呼ばれた学習指導要領に対する批判が大きくなったことで、「良くないイメージ」で使われることが多くなりました。
最近では「忖度」という言葉も「良くないイメージ」が強くなってきています。もともとは「他者の気持ちを推し測る」という意味で、決して「良くない意味」ばかりの言葉ではなかったはずなのですが、どうも最近では「上位者がはっきり口に出さなくても、その意を汲んで行動する」というような、あまり「よくない意味」で使われているように思うわけです。
- 2018.06.13 『梅雨の陽性と陰性 ~言葉のイメージ~』
- 2018.06.08 『梅雨と夏の自由研究』
- 2018.06.06 『全国統一小学生テストを終えて ~問題はちゃんと読めていましたか~』
- 2018.06.01 『6月3日 全国統一小学生テスト』
- 2018.05.30 『香港講演会』