『出題意図を読み取る ~記述型問題の攻略~』
2019.09.18
「大学入試センター試験」が「大学入学共通テスト」に切り替わる時期が近付いてきています。英語において民間試験が導入されるといった話題もありますが、大きな変更点の1つとして、いままでマークシートで行われていたテストに「記述」が導入されるということが挙げられるでしょう。2020年からは国語の問題で、さらに2024年からは理科・社会も含めて記述型の設問が導入される予定になっているそうです。実は大学入試だけではなく、中学入試においても、「記述型の出題」が増えてきています。今回は「国語の記述問題」を学習する際の留意点に関して書かせていただきます。
本質的な表現力と、国語の記述問題で正解するための「力」には、共通する点もあれば、異なる点もあると考えています。「問題に正解する力」には、ある程度テクニック的な部分もあります。入試へ向けた解法テクニックとして考えると、それは本質的な表現力からはズレてしまうように思われますが、「相手に対して正確に物事を伝える」という点においては、共通であると思います。
また、これから先の世界においては「外国語を使ったコミュニケーション」が不可欠であり、外国語能力を高めていくことも必要だといわれています。そのためには、英語を「語学」として学ぶだけではなく、その文化も含めて理解をすることが重要だと、私は考えています。コミュニケーションにおいては、対話をする相手を理解することが重要だからです。単に言いたいことが外国語で表現できるだけではなく、それが伝わるためには、相手に対する理解が必要です。そして、その点に関しては「外国語」でも「母国語(日本語)」でも違いはありません。「国語」という科目で学んでいる「表現力」は、「日本語を使った表現力」だけにとどまらず、より幅広い「表現力」につながるものなのです。「母国語」を使ってしっかりと表現ができる力を持っていなければ、いくら「外国語」を勉強したとしても、外国語を使ったコミュニケーションができるようにはならないのです。
さて、この「相手に対する理解」という点は、国語の記述問題を解くときのひとつのキーワードになります。問題を解くときに意識する「相手」とは誰のことでしょう。それは、文章の筆者ではなく、設問を作った(もしくは模範解答を用意した)出題者ということになります。「出題者はこの問題で何を答えさせようとしているか」、それを意識することが記述問題で正解する最大のポイントです。その点を意識し始めれば「どのように考えるべきか」が自然と理解できるようになってきます。もちろん、小3~小4段階での生徒にとっては、かなり高いハードルであるということは言うまでもありません。一度教えたからといってすぐに「出題者の意図」が読み取れるようにはならないのは当たり前のことです。ただ、「問題を作った人(出題者)」という存在を意識するところからスタートして、トレーニングを積み重ねていくことで、徐々にできるようになっていくはずです。小5になってからそれを教えたとしても、やはりトレーニングが必要であることには変わりはありませんので、早い段階で「出題者」を意識させることが必要になるわけです。
中学受験においては「精神的成長が重要」とよくいわれます。特に、この「出題者意図の理解」という点においては、精神的成長が大きく影響してきます。設問に隠された(決して「隠して」いるわけでもないですが……)部分を読み取るのは、やはり精神的に成長していることが必要になるわけです。記述問題に限らず、出題者が用意した選択肢の「ひっかけ」を見破ることもできるようになってきます。逆から考えれば、「出題者の意図」を読み取ることを意識してトレーニングを積み重ねることは、精神的な成長を促すことにもつながるはずです。
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