『0と1の間に……』
2020.06.12
今年は、武蔵小杉校で小3算数の授業を担当しており、いまは「小数」の導入を行っています。小3から小4の算数授業では、新しい学習単元の「導入」授業がいくつかあります。この導入を行う際は、毎回少し緊張して授業に臨んでいます。
保護者会やセミナーなどでもお話ししているのですが、「はじめの一歩」をどう踏み出すかはとても大切です。単に「知識」として教えるだけであれば、それほど難しいことではないのですが、その単元の「本質的」な部分をきちんと理解してもらうためには、どう教えればよいかを考えたり、工夫したりする必要があります。最初の導入段階で本質的な理解ができていれば、そこから世界は大きく広がっていきます。一方で、単純な知識としての理解だけだと、その先に進むときにはまた新たに「覚える」ことが必要になってしまうのです。
以前にも書かせていただいたのですが、「わり算」について学ぶときに、最初の段階で、その式の本質的な意味をきちんと理解できていれば、使いこなせるようになるのですが、そこの理解が不十分だと発展的な問題に対応ができなくなります。「80÷5=16」というわり算には「80を5つに分けるとひとつは16」という意味だけではなく、「80の中に『5』は16ある」という意味があることを、理解しているかどうかで「わり算」が使える問題の範囲が大きく変わってくることはご理解いただけるでしょう。「ABCDEABCDEABCDE……と規則的に文字が並んでいます。80番目までにAはいくつあるでしょう」という周期算の問題があります。「ABCDEという5つの文字の『まとまり』が、80個目までにいくつあるかを考えてみよう」と話したときに、わり算の「後者」の意味を理解していれば、すぐに「80÷5」という式を思いつくことができるはずです。一方でそこが理解できていないと、「周期算はわり算を使う」という知識を「覚える」ことになってしまうのです。
小数の話に戻ります。それまでは「整数」だけの世界で考えてきた小3生に、いきなり「小数」という新しい概念を教えることになります。実はそれは、「小数点」とか「小数第一位」とかの知識が増えるというだけではなく、「数の世界」が一気に広がるということなのです。
それまでは「0の次は1」というのが、お子様にとっての数の世界でした。ところが、小数を理解するということは「0と1の間」にたくさんの数があるということを学ぶことになるのです。そして、その間には無数の数があるという学びにもつながります。お子様にとって、いままでは「0の次は1」と思っていたところに、実はその間には数えきれないくらいたくさんの数が存在しているということは、大きなカルチャーショックになるのではないでしょうか。その「カルチャーショック」をしっかりと味わってもらいたいのです。そのある種の「不思議さ」をしっかりと心に刻みながら、成長していってほしいと思っています。
小4では「小数」「分数」でこんな話をすることがあります。 「1÷7=0.14285714285714……」 「6÷7=0.85714285714285……」 永遠に終わりのない「循環小数」となります。
一方で「(1÷7)+(6÷7)=7÷7=1」となります。さて、「1÷7」「6÷7」の答えになっている循環小数の各位を足してみてください。「0.999999999999……」 数学の世界では「1≒0.9999999999……」ということになっているのですが、単にその知識を知っているということではなく、そこに「ちょっとした不思議」を感じるようになってほしいと思っています。
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