四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『甲子園』

2020.05.22

昨年の夏の高校野球(正式名称:全国高等学校野球選手権大会)は、地方予選を含めると全国で3,730校が参加したそうです。


算数で「3,730校が参加したトーナメント大会があります。優勝校が決まるまでに、試合は何回行われるでしょう」という問題があります。答えは簡単です。「3730-1=3729」という計算で、3,729試合となります。トーナメント方式は別名「ノックアウト方式」「勝ち抜き戦方式」と呼ばれることもあるように、一試合行われるごとに1チーム脱落していき、最終的に「一度も負けなかったチーム」が優勝となるわけです。ですから、全チームから一度も負けなかった1チームをのぞいた数が、全試合数となるのです。


こう考えると、甲子園で優勝するチームの「凄さ」がわかる気がします。全国3,730のチームの中で、6月から始まり8月後半の最終戦まで、一度も負けなかった唯一のチームなのですから。一方で、優勝校以外のすべてのチームが、実は、「負けた回数は1回」なのです。地方予選の初戦で敗退したチームと、甲子園の決勝で負けたチーム(準優勝校)の間には、もちろん勝利数の違いはありますが、負けた回数だけを考えると、どちらも「1回」です。この1回の敗戦は球児たちの(特に高校3年生にとっては)「心に残る敗戦」なのではないでしょうか。


今年の「夏の甲子園大会」が中止になるというニュースが先日流れました。新型コロナウイルスの影響で、さまざまな夏のイベントが中止となっている時期ですが、やはり個人的にも残念だと思います。


数年前、夏の甲子園大会のスタンド席でチアリーダーとして応援したいという気持ちから志望校を決めた生徒がいました。西東京代表になることが多い有名大学の附属校といえば、おわかりになる方も多いでしょう。ニュースを受けて落胆している野球部の生徒の様子などもテレビでは流されていますが、さらに多くの高校生の気持ちも動いていることと思います。高校野球の「甲子園大会」は、日本における高校生スポーツの象徴のように取り上げられるので、今回の中止も大きく報道されていますが、インターハイも中止になり、吹奏楽部や合唱部のコンクールなども中止になり、ずっと目指してきた「目標」や「夢」が失われてしまった生徒が多くいるはずです。


「目標があるからこそがんばれる」というのは、どの世界でも同じことだと思います。中学受験という目標に向かって日々学習する小学生も、甲子園という目標に向かって練習を続ける高校球児も、その「がんばる」気持ちの原点は同じもののはずです。その目標を突然奪われてしまった高校3年生の心の中の「喪失感」を考えると、本当にかわいそうに思えてきます。今回の「甲子園大会中止」の報道の中で、ある高校の野球部監督が「どんな状態でも挑戦だけはさせてやりたかった……」というコメントを発表していました。


入試直前期になると「成績的にはこちらの学校の方が合格の可能性が高いのではないか」というご相談をいただくことがあります。第一志望校と同じ日程での受験の場合などは、「第一志望をあきらめて」というお考えになる場合もあります。ただ、そのときには「いままでそこに向けてがんばってきたのです。ですから受験する前にあきらめるのはおすすめしません」という話をさせていただいています。もちろん、お子様の気持ちやご家庭の方針などを考えながらのことなので、すべてではないのですが。ずっとあこがれていた「夢」「目標」にチャレンジしてはね返されたという経験は、一時的な「挫折」にはなるかもしれませんが、きっとその先につながる経験になると私は思います。もちろん入試で不合格になることがよいという意味ではありません。ただ、チャレンジする前にその目標を「あきらめてしまったり」「奪われてしまったり」というときは、「悔しさ」「情けなさ」しか残らないようにも思うのです。


新型コロナウイルスに関しては、さまざまな報道がなされています。小学校から高校・大学までの児童・生徒に関してのニュースもさまざま見聞きします。学校が再開された地域もありますし、休校が延長されている地域もあります。学校の夏休み期間も自治体ごとに公表されている地域もあるようです。さらには「9月新学期」へ向けた議論も始まっているというニュースもあります。運動部や文化部の大会・発表会も中止になったものの代替案を考えるべきだという意見もあるようです。さらには、各学校の「修学旅行」や「移動教室」なども。そういったニュースに接すると、やはり私はいま教えている生徒たちや卒塾していった生徒たちのことが頭をよぎります。彼らにとって、いちばんよい方法を考えてほしいという気持ちになるのです。

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