四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『成功と失敗』

2021.04.09

新学期の授業が昨日よりスタートしました。学校でも新学期を迎えて、新しい気持ちになっているお子様も多いことでしょう。しっかりと新学期のスタートダッシュを決められるように、早稲田アカデミーでもより密度の高い指導を進めてまいります。


以前ちょうどこの時期に、早稲田アカデミーへの入塾をお考えになっている方から、「小学校受験で失敗させてしまったので、怖くて中学受験への一歩が踏み出せない」というご相談をいただいたことがあります。今回は「失敗」というテーマで。


子どもには辛い思いをさせたくないという気持ちは、親であれば誰しもが持っていることでしょう。ただ、一方で子どもの将来の成功を願わない親もいないはずです。「将来の成功」のための選択肢としての中学受験なのであれば、積極的に一歩を踏み出していただければと思います。


受験である以上、そこには合格者がいれば、残念な結果に終わる方もいます。不合格になることそのものを「失敗」と捉えてしまうと『失敗が怖い』というお気持ちになるのもわからなくはないのですが、不合格という結果は本当に「失敗」なのでしょうか。私は中学受験の成功は必ずしも合格することではなく、不合格という結果も失敗とはいえないと考えています。


毎年、新年度がスタートする時に、小6受験生に対して『受験の成功・失敗』という話をします。その中で『合格することが成功なのであったとしたら、隣の生徒の答案が見えて、それを写して合格しても成功なのか』という問い掛けをします。もちろん『それは成功ではない』『よくないことだ』という答えが返ってくるわけなのですが、なぜ「成功ではないのか」「よくないことなのか」も考えさせるようにしています。最終的には『自分の力で合格しなければ、入学してもついていくことができないから』という答えに行き着くことになるわけです。中学受験では、その中学校に入学するのにふさわしい力を持っているかどうかを試すために入学試験がある。そのための力を蓄えることができれば、それこそが成功……と生徒たちには話をします。


中学受験を進めていく過程において身に付くものが大きく二つあると考えています。一つは『大きな目標に向かって真剣に取り組む経験』であり、もう一つは『深く考え、判断していく力』であると思います。もちろんその土台として、幅広くたくさんの知識も身に付くでしょうし、素早く正確に処理をしていく力も身に付くでしょう。そして、それらの経験や力は、お子様方が未来を生きていく上で活かされるものであると考えます。そう考えた場合「中学受験に失敗はない」というのが、私の結論なのです。


お子様も「失敗したくない」という気持ちはあるでしょう。将来の入試での失敗というよりも、普段の学習やテストにおいて失敗はしたくないという気持ちが強いお子様は多いと思います。宿題が終わったところでお母様がマル付けをしてバツが付くととたんに機嫌が悪くなる、というご相談を受けたことがあります。バツがたくさん付くと、勉強に対するやる気もなくなって宿題を途中で放り出したり、塾にも行きたくないと言い始めたりするというお話をうかがったこともあります。


小学校低学年~中学年のお子様は、もともと「ほめられたい」という気持ちが強いものですから、宿題などは「完璧」に仕上げることを目指します。精神的にはまだまだ未熟ですし、経験も少ないので、(よい意味での)妥協ということもできないはずです。さらに、中学受験を目指して塾に通い始めたお子様ならば、学校では標準以上の成績の方が多いはずですので、「宿題ができない」「たくさんバツを付けられた」というような経験もしたことがないでしょう。そう考えれば、「できなかった問題がたくさんあった」という事実は、お子様にとって(大人の想像以上に)ショックなもののはずです。感情を抑えることがまだまだできず、さらに「甘え」が残っている年代のお子様が「宿題ができないことで癇癪を起こす」というのは、ある意味当たり前のことなのです。


そういった場合に、親はどうすればよいのでしょうか。難しい問題を解かせてできないと機嫌が悪くなるのですから、簡単な問題だけを解かせるようにすればよいのでしょうか。中学受験を目指すという視点で考えれば、それでは目標に届かないのはおわかりいただけると思いますが、中学受験学習に限らずとも「できる問題」だけを与えていくのは、お子様の成長にとって好ましくないというのもご理解いただけると思います。


次に、親が「手取り足取り」リードをして失敗しないように導く、という方法があります。「問題を解く」ということで考えれば、わからない問題の「解き方を教える」ということになります。教えるということ自体が悪いわけではないのですが、一からすべてを教えてしまうと、結果、お子様は自分で考えることをせずに、「わかったつもり」になってしまうことにもなりかねません。自分で考えて失敗することで、次は同じ失敗を繰り返さないようになっていくのは、「学習」ということの本質のひとつだと私はとらえています。


高校・大学と学ぶべきことのレベルが上がっていけば、さらには社会で活躍するようになると「正解」が用意されていない問題や課題が多くなっていきます。そういった問題は、当たり前ですが正解まで導いてくれる存在はいませんし、一回で正解までたどり着けるようなものではないはずです。たくさんの失敗を繰り返しながら、多くの試行錯誤を積み重ねて、大きな問題を乗り越えていく……。そのための土台をつくるために、高いハードルにどんどんトライしていってもらいたいと考えています。

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