『塾は習い事……？』

2021.04.23

「塾は習い事か」という話題は、たまに出てきます。皆様はいかがお考えでしょうか。

実は「習い事」という言葉の定義をどのように考えるかによって、答えは変わってくるのです。「広義」「狭義」という表現がありますが、その言葉をどのように定義するかによって、含まれる物事が変わってくるのは日常でもよくあることでしょう。まれに入試問題などで「問題不成立」や「複数解答が考えられるため、全員正解」となるケースがありますが、その一部はこの「言葉の定義」のとらえ方による場合もあります。

たとえば、「蕎麦は和食か」という問題で考えてみるとわかりやすいかもしれません。そばという穀類を使った料理は世界中にあるそうです（有名なところではフランスのガレットでしょうか）。ただ、そば粉をこねて麺を作り、出汁に入れて食べるという「そば（日本蕎麦）」は日本独特の料理でしょう。そういう意味では「和食」ということができそうです。しかし、ユネスコ無形文化遺産に登録されている「和食」という定義で考えてみると少し違うようにも思われます。農林水産省のＨＰを見てみると、和食は「一汁三菜を基本とした伝統的な食文化」と定義されています。いろいろな視点や論点があるようですが、この農林水産省の定義から考えると、「蕎麦」は少し外れてしまうようです。さらには「すき焼き」も、この定義においては「和食」には入らなさそうです。

話をもとに戻します。「習い事」という言葉を「義務教育である学校外での活動」というような定義で考えると、塾も「習い事」のひとつに入ってきます。一方で、塾を「習い事」に含めて考えるのには、少し違和感を覚える方もいらっしゃるのではないでしょうか。その背景には、「習い事＝楽しい・趣味」というようなイメージがあるのではないかと思います。さらに進学塾の場合は、「中学受験」という大きな目標（ゴール）があることから、スポーツや音楽などの「習い事」とは違うもののように感じられる方も多くいらっしゃると思います。

私は「塾も『習い事のひとつ』と考えてスタートをしてください」という話をさせていただくことがあります。そもそも「習い事」は、お子様の能力を開発したり、感性を豊かにしたり、というさまざまな目的をもって始められるものだと思います。身体の健康を考えるならば運動系の習い事になるでしょうし、感性を高めるという目的ならば音楽や絵画などの習い事になるでしょう。また、将来に役立つ力としては語学（英語など）を習うというケースもあります。同じように考えて、頭脳を鍛えるという点で塾は習い事と考えることもできると思うのです。

「頭脳を鍛える」「学習能力を高める」という習い事は、昔からいろいろあります。代表的なのは「そろばん教室」でしょう。計算力を鍛え、数感を高めるために「そろばん」を習うというのは、昔から行われてきた習い事です。「書道」「習字」も学習系の習い事のひとつということができます。最近では「プログラミング教室」がこれからの将来に役立つ習い事として注目されています。

大学入試改革の中で問われる力は、「思考力・判断力・表現力」「主体的な学習姿勢」「多様性・協働性」といったキーワードが使われています。これらの力は中学入試においても問われているものです。こういった学習を進めていく進学塾のカリキュラムや授業は、受験知識・テクニックの「詰め込み」ではなく、「自分で考える力の土台」を作るものに変わってきています。この点において進学塾は、まさに「頭脳を鍛える」習い事といえると考えています。

健康な身体のためには、しっかりとした体幹を作るためには、体が成長していく時期に運動系の習い事をするのがよいという話を聞いたことがあります。実は私も、幼稚園の年中から小学６年生までスイミングクラブに通っていました。高学年時には「選手コース」で、一週間に５日～６日もプールで泳いでいました。それもあってのことだと思うのですが、いまでも少々のことで体調を崩すことはありません。

進学塾では、小５・小６になれば志望校も決まり、そのゴールに向けて取り組んでいくことになります。そのタイミングになれば、その他の習い事よりも取り組み方は変わってくることが必要です。ただ、その手前の小３・小４段階では「中学受験学習に向けた土台作り」もそうなのですが、そこで学ぶことは、さらにその先の未来に向けた「土台作り」だと考えています。１０歳前後のお子様は、身体が大きく成長する時期でもあるのですが、それは頭脳が大きく成長する時期でもあります。さらに精神的にも成長著しい時期となります。そこで「鍛える・育む」ということの大切さを考えながら、私も授業をさせていただいております。

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