『リットルをどう書くか』
2021.09.15
「ビンの中にジュースが0.5ℓ入っています。春子さんはそのうちの3㎗を飲みました。残っているのは何㎖でしょうか」
算数の単位換算の問題ですが、実はこの問題は「時代遅れ」なのです。内容面ではありません。「リットル」の表記に関してなのです。いま小学校の教科書では「リットル」は「ℓ」ではなく「L」と表記されるようになっているのをご存知でしょうか。ですからこの問題を時代に合わせて表記すると……、 「ビンの中にジュースが0.5L入っています。春子さんはそのうちの3dLを飲みました。残っているのは何mLでしょうか」となるわけです。
「ℓ」から「L」に変わった理由を調べてみたところ、2011年の教科書検定での意見として「L」を使うべきとあり、そこから全面的に変更されたとのことでした。変更された理由としては、国際的な単位表記のルールに則ったのだそうです。ただ、単位表記においては、本来小文字を使うルールのため、リットルは「l」と表されるのですが、数字の「1」と間違えやすいため、大文字の「L」を使うことが例外的に認められているのだそうです。そのルールに合わせたというのが真相のようです。
「真相」と書いたのには理由があります。 実は、以前「ℓ」から「L」に表記が変わったのは、小学校や中学校で「筆記体」を学ぶことがなくなったからだと聞いたことがあるのです。以前、日本では中学校で英語を学ぶときには、ブロック体と同時に筆記体も学習していました。私自身も、筆記体がなんとなくかっこよく見えて、名前を筆記体で「サインっぽく書く」練習をした覚えもあります。思い出してちょっと書いてみたのですが、いまでも書けます。ただ、筆記体は「素早く書く」ための書体であるにも関わらず、私はブロック体で書くより時間がかかってしまうので、「サイン」として使うことはできなさそうです。
日本の英語教育から「筆記体」が消えたのは、2002年からの学習指導要領改訂(俗にいう「ゆとり教育カリキュラム」)のときからのようです。公立学校の完全週休二日制への移行にともない、いくつかの科目で学習内容が削減されました。算数で円周率を「3.14」ではなく「3」で計算する、となったのもこのタイミングです(その後また「3.14」に戻りましたが……)。英語の筆記体学習もこのタイミングで学習指導要領から外され、その後は復活していません。私が書いてみた「筆記体のサインぽいもの」を、校舎の若い職員に見せてみたのですが、「筆記体、読めないんです」と言われてしまいました。
調べてみたところ、アメリカでも「筆記体」は教わらない学校(州によって違うそうですが)が多くなっているそうです。昔見た映画で、学校の先生が黒板にチョークでスラスラと筆記体を書いているシーンを覚えているのですが、そういう光景はかなり昔のことのようです。もともと欧米では文書を書くときにタイプライターが使われていましたから、手書きするのは、学校のノートくらいだったと聞いたことがあります。正式な文書を書く時にはタイプライターを使うというスタイルなのでしょう。もちろん現在はタイプライターではなく、パソコンを使って文書を書くというのが主流となっているのでしょうが。
以前、ある場所で昔の「ワープロ機」を見たことがあります。そこにいた若い人たちが……、 「これなに?パソコン?」 「『ワープロ』って書いてあるよ……」 「えっ?ワープロ、って何?」 そんな会話を交わしていました。おせっかいなおじさんになって「ワープロっていうのはね……」と教えてあげようかとも思ったのですが、恥ずかしくなってやめてしまいました。
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